2001 Fiscal Year Annual Research Report
走査トンネル顕微鏡により制御する磁性原子架橋のナノ物性に関する理論的研究
Project/Area Number |
13650026
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中西 寛 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (40237326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠井 秀明 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00177354)
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Keywords | 原子架橋 / ナノワイヤー / 磁性 / STM / 第一原理計算 / 構造安定性 / 鉄 |
Research Abstract |
第一原理電子状態計算を用いて、鉄の原子架橋の安定構造と磁性・伝導性について考察した。 直線型架橋構造の場合、原子間距離が2.25Åで、軸方向の応力が無い状態となり、3.31μ_B/原子の磁気モーメントを持つ高スピン強磁性状態になる。そこから軸方向に架橋を押し縮めていくと2.0Åあたりで急峻に磁気モーメントが減少し、2.0μ_B/原子の低スピン強磁性状態となる。更に押し縮めると1.6Åで磁気モーメントは消失し常磁性状態となる。この原子架橋のサブバンド構造を調べたところ、高スピン強磁性状態のとき2.5G_0(偏極率60%のスピン偏極電流)、常磁性状態で6G_0の量子化コンダクタンス(G_0=2e^2/h.)を持つことを見出した。 なお、2.0Å以下の場合には、低スピン強磁性状態および、常磁性状態の直線型架橋構造は安定ではなく、高スピン強磁性状態のジグザグ構造が安定な事を以前に見出している。これはSTM探針操作により原子架橋の磁性状態を変化させる為には、原子の配列をほぼ一直線上に保つ必要があるが、これは単原子鎖の場合には困難であること意味する。しかし架橋断面により多くの原子を含む構造であれば安定に存在しうる可能性がある。 そこで更に太い原子架橋として、架橋断面に2つの原子を含む架橋を調べたところ、ねじれた梯子構造が安定であることが見出された。この構造は、押し縮めの操作に対し安定で、軸方向の原子間距離が、1.10Å以上では、高スピン強磁性状態をとる。また、1.10Å以下に縮めた場合も構造が壊れることなく常磁性状態に遷移することが見出された。すなわちSTM探針操作により、格子定数を変化させ鉄原子架橋の磁性を変化させうることが示された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Hiroshi Nakanishi, Hideaki Kasai, Ayao Okiji: "Atom bridge made from magnetic materials-atomic configuration and magnetic properties-"Surface Science. 493・1-3. 757-762 (2001)
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[Publications] Hiroshi Nakanishi, Hideaki Kasai, Ayao Okiji: "Effects of the intra-site Coulomb interaction on electron transport in an atom bridge"Applied Surface Science. 169-170. 72-76 (2001)
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[Publications] Hiroshi Nakanishi, Hideaki Kasai, Ayao Okiji: "Structural Deformation and Magnetic Properties of Magnetic Atom Bridge"真空. 44・3. 392-39* (2001)
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[Publications] Hideaki Kasai, Hiroshi Nakanishi, Tomoya Kishi, Fumio Komori, Ayao Okiji: "Magnetic properties and structures of Fe-Ni alloy atom bridges"真空. (掲載受理). (2002)
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[Publications] Hideaki Kasai, Hiroshi Nakanishi, Tomoya Kishi, Fumio Komori, Ayao Okiji: "Magnetic properties of Fe-Ni alloy atom bridges"Surface Science. (accepted for publication). (2002)
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[Publications] Hideaki Kasai, Hiroshi Nakanishi, Tomoya Kishi, Fumio Komori, Ayao Okiji: "STM-tip induced magnetic state change of Fe atom bridge"Surface Science. (accepted for publication). (2002)