2003 Fiscal Year Annual Research Report
走査トンネル顕微鏡により制御する磁性原子架橋のナノ物性に関する理論的研究
Project/Area Number |
13650026
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中西 寛 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (40237326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠井 秀明 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00177354)
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Keywords | 原子架橋 / ナノワイヤー / 磁性 / STM / 第一原理計算 / 合金 / 鉄 / ニッケル |
Research Abstract |
昨年度、密度汎関数理論を基にした第一原理計算を援用して、探針操作に対して安定な原子配置を探査し、"ねじれた梯子構造"を見出した。このねじれた梯子構造の鉄-ニッケル(Fe-Ni)および鉄-バナジウム(Fe-V)合金の原子架橋をとりあげ、磁気モーメント、スピン依存量子化コンダクタンスの特性を評価した。それぞれの特性の合金の原子構成比依存性について調査し(原子架橋版Slater-Pauling曲線を作成)、それらの起源を明らかにした。Slater-Pauling曲線の右側に位置するFe_<1-α>Ni_α合金原子架橋では、Feの磁気モーメントは3.3μ_B、Ni原子においても0.9μ_Bとそれぞれ通常の鉄およびニッケルのバルク結晶中よりも格段に大きな磁気モーメントを持ち、それは構成比αに依存することなく、保持されることが分かった。Slater-Pauling曲線の左側に位置するFe_βV_<1-β>合金原子架橋では、β=1を除いて対応する合金バルク結晶とほぼ同じ平均磁気モーメントをもつことがわかった。V原子はほぼ磁気モーメントをもたず、Fe原子においては、磁気モーメントが強く抑制されることが見出された。スピン依存量子化コンダクタンスについては、Fe_<1-α>Ni_α合金原子架橋の場合、多数スピン電子からのコンダクタンスへの寄与は構成比α依存性がなく、少数スピン電子からの寄与は構成比αの変化に対し敏感に変化することがわかった。少数スピン電子のサブバンド構造を、合金化により制御し、原子架橋を流れる電流のスピン偏極を制御することが可能であると思われる。これに対し、Fe_βV_<1-β>合金原子架橋の場合は、多数スピン電子、および少数スピン電子両方のコンダクタンスへの寄与が、構成比βの変化に対し敏感に変化することが見出された。この場合、原子架橋を流れる電流のスピン偏極を制御するには、より精密な原子操作技術が要求される。以上、合金化により磁性状態およびスピン依存量子化コンダクタンスの制御が可能であることを確認した。この成果は、原子架橋の機能デバイスとしての潜在的有用性を示すものである。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Hiroshi Nakanishi, Hideaki Kasai, Tomoya Kishi, Wilson Agerico Dino, Ayao Okiji, Fumio Komori: "Magnetic and transport properties of Fe_βV_<1-β> atom bridge constructed between an STM tip and a solid surface"Journal of Magnetism and Magnetic Materials. (印刷中). (2004)
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[Publications] 岸智弥, 笠井秀明, 中西寛, Wilson Agerico Dino, 小森文夫: "Band Structure and Surface localized States of Fe Thin on Cu Surface 「Cu表面上Fe薄膜のバンド構造と表面局在状態」"真空. (印刷中). (2004)
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[Publications] Hiroshi Nakanishi, Hideaki Kasai, Tomoya Kishi, Fumio Komori, Ayao Okiji: "Transport properties of magnetic atom bridges controlled by a scanning tunneling microscope"Applied Surface Science. 212-213. 829-832 (2003)
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[Publications] 岸智弥, 中西寛, 笠井秀明, Wilson Agerico Dino, 小森文夫: "Magnetic Properties of Fe Nanowires on Cu(111) 「銅(111)上の鉄ナノワイヤーにおける磁性」"真空. 46・3. 291-293 (2003)
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[Publications] Hiroshi Nakanishi, Hideaki Kasai, Tomoya Kishi, Fumio Komori, Ayao Okiji: "Transport and Magnetic Properties of Magnetic Alloy Atom Bridge"Physica E. 18・1-3. 251-252 (2003)