エポキシ系複合材料の力学的特性の温度・時間依存性に及ぼす硬化状態の影響

2002 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13650074
• Research Institution: Tokyo Institute of Technology
• Principal Investigator: 足立 忠晴 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (20184187)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 山路 昭彦 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (80239996)
• Keywords: エポキシ樹脂 / シリカ粒子充填エポキシ樹脂 / ガラス転移温度 / フラジリティー / 破壊靭性値 / 熱粘弾性特性 / 温度・時間換算則

Research Abstract

本研究はエポキシ樹脂およびエポキシ樹脂を母材とする粒子充填複合材料の力学的特性の長時間および広範囲な温度特性に及ぼす硬化状態の影響を明らかにすることを目的とした.
試料としてエポキシ樹脂の中でも標準的なビスフェノールA形樹脂を選択して様々な温度,時間の硬化条件で試料を作成した.それぞれの試験片の熱粘弾性特性を測定し,ガラス転移温度,フラジリティーを決定した.ラマン分光測定によりガラス転移温度が硬化度を示すことを明らかにした.これにより,ほぼ硬化が飽和した後も均質性を示すフラジリティーが小さくなることがわかった.
次に室温におけるエポキシ樹脂の弾性係数および破壊靭性値を測定した.弾性係数は,樹脂がほぼ硬化していれば,ほとんど変化せず,破壊靭性値は硬化条件に強く依存する結果となった.硬化状態との相関関係よりガラス転移温度が400K程度となっていれば,フラジリティーが小さい不均質の方が破壊靭性値が大きく向上することが判明した.
次に溶融シリカ粒子を充填させたビスフェノール樹脂についても同様の検討を行った.この結果,ガラス転移温度が大きく,フラジリティーが小さい試料の方が,破壊靭性値が増加し,エポキシ樹脂単体の場合と同じ傾向が見られ,力学的特性との相関のある硬化状態を示すパラメータとしてガラス転移温度およびフラジリティーの有効性が確認された.
さらにエポキシ樹脂および溶融シリカの破壊靭性値の温度・時間依存性について測定した.エポキシ樹脂,シリカ粒子充填エポキシ樹脂とも熱粘弾性特性から得られる温度.時間換算則に従うことが明らかとなった.またガラス転移温度が高く,フラジリティーが小さい試料の方がガラス転移温度付近の破壊靭性値が顕著に高くなることが判明した.
これにより適切な硬化条件を選択することにより,室温だけでなく,温度・時間特性についても大きな破壊靱性値の向上が期待できることが明らかとなった.

Research Products

• [Publications] Wakako Araki, Tadaharu Adachi, Masahiro Gamou, Akihiko Yamaji: "Fracture Toughness of Bisphenol A-Type Epoxy Resin"Journal of Applied Polymer Science. 85. 2266-2271 (2002)
• [Publications] Wakako Araki, Tadaharu Adachi, Masahiro Gamou, Akihiko Yamaji: "Time-Temperature Dependence of Fracture Toughness for Bisphenol A Epoxy Resin"Journal of Materials : Design and Applications. 216・2. 79-84 (2002)
• [Publications] Tadaharu Adachi, Akihiko Yamaji他3名: "Fracture Toughness of Silica Particulate-Filled Epoxy"Journal of Applied Polymer Science. 85. 2261-2265 (2002)
• [Publications] Wakako Araki, Tadaharu Adachi, Akihiko Yamaji: "Fracture Toughnesses of Bisphenol-A Type Epoxy Resin and Silica Particulate-Filled Epoxy Composite"Proceedings of the Intentional Symposium on Experimental Mechanics. D184 (2002)
• [Publications] 荒木稚子, 足立忠晴, 山路昭彦: "き裂を有する熱粘弾性円筒の非定常熱応力解析"日本機械学会材料力学部門講演会講演論文集. 02-05. 289-290 (2002)