2001 Fiscal Year Annual Research Report
生体吸収性材料による機能的連続体の開発とその医療への応用
Project/Area Number |
13650079
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
坂本 二郎 金沢大学, 自然科学研究科, 助教授 (20205769)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 忍 金沢大学, 工学部, 助手 (80196039)
尾田 十八 金沢大学, 工学部, 教授 (30019749)
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Keywords | 生体吸収性材料 / 機能的連続体 / 薬物送達システム / ポリL乳酸 / 生体医療工学 / 材料力学 / 残留応力 |
Research Abstract |
本研究では、生体吸収性材料による機能的連続体の応用として、薬物送達システム(Drug Delivery System: DDS)を考えた。DDSでは副作用低減の観点から薬物を作用部位に安全かつ効果的に導くことが要求されており、薬物を封入したカプセルでこれを実現する場合、カプセルの分解速度を制御する必要がある。しかし、カプセルのサイズだけで任意の分解特性を得ることは困難である。そこで、本研究ではDDSのカプセルを生体吸収性材料による機能的連続体と考えて形状を設計し、さらにはこれを予め残留応力を与えることで、分解速度や薬物放出時の挙動が調整できるものと考えた。この可能性を確認するため、生体吸収性材料であるポリL乳酸(PLLA)を用いて二次元的な機能的連続体を作製し、これに残留応力が作用するような加工を施した上でギ酸を生体内の環境と見たてて分解実験を行ない、残留応力が分解時の挙動に及ぼす影響について検討した。具体的には、二次元の機能的連続体として部分によって厚さの異なる不等厚リングをPLLAで作製し、その一部を切り取ってできる断面を改めて接合して不等厚リングの全域にわたり残留応力を発生させる。リングの切り取る部分の大きさを変えることにより発生する残留応力も変化することができるが、材料力学における曲がりばりの理論を用いて、リングの切取り角と最大残留応力の関係を明らかにした。残留応力を作用させた不等厚リングと、そうでもないものとでリングが破断するまでの分解の様子を比較した結果、残留応力を有するものの方が著しく分解速度が速く、破断時のリングの開き量もやや大きいという結果が得られた。これにより、生体吸収性材料で不等圧の連続体を作製し、厚さ分布と残留応力の大きさを変えることで、破断に至るまでの分解時間制御が可能で、DDSへの応用における有効性が明らかとなった。
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