地震電磁界観測に含まれる異常信号変動の自動検出と雑音除去に関する研究

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13650477
• Research Institution: Chiba University
• Principal Investigator: 服部 克巳 千葉大学, 海洋バイオシステム研究センター, 助教授 (60244513)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 伊勢崎 修弘 千葉大学, 理学部, 教授 (60107943) ; 長尾 年恭 東海大学, 海洋学部, 教授 (20183890) ; 早川 正士 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (80023688)
• Keywords: インターステーション応答関数 / レファレンス観測点 / 地球超高層起源の電磁場変動の除去 / 主成分解析 / 直流電車の信号 / 適応信号処理 / 房総ゆっくり地震 / 2000年伊豆諸島群発地震

Research Abstract

最終年度も昨年度に引き続き、地震に関連する信号は非常に微弱であるために、昨年度と同様に時系列データから地球超高層起源の電磁場変動を除去する手法の開発・検証を以下のとおり実施した。また、今年度は共同研究者と定期的にセミナーを開催し、意見交換も精力的に行った。国内外の学会や論文誌等で本研究の成果を発表し、本研究の報告書も作成した。
(1)インターステーション応答関数(Inter-station transfer function ;以下,ISTF)法。
ISTFは複数の磁場観測点で測定された磁場データの成分間に成り立つ応答関数であり,観測点の電気伝導度分布に依存する。時系列データをウェーブレット変換し,ISTFおよび残差の推定を全てウェーブレット領域において行った。解析では、房総半島の電磁場観測点で取得されたULF磁場データと気象庁地磁気観測所(柿岡)の磁場データをレファレンス・データとして利用した。その結果、磁場データ、電場データとも超高層起源の最も強度の強い信号に関連する信号を概ね除去することに成功した。また、伊豆半島で観測されたデータにも適用し、その有効性を確認した。
(2)レファレンス観測点を使用せずに超高層起源の信号を除去する方法の考案。
レファレンスを利用する方法はリファレンス点の電磁環境の影響が結果を大きく左右する。そこで、伊豆半島の3点アレー観測点で夜間に観測された磁場データの主成分解析を行った。その結果、第1主成分は安定しており、超高層起源の信号と相関のよいことがわかった。第1主成分を除去することによって、超高層起源の最も強度の強い信号に関連する信号を概ね除去できる可能性があることがわかった。
(3)超高層起源の信号を除去した時系列データから直流電車の信号を抽出し、自動検出を試みる。
(1)のISTFを用いて超高層起源の信号を除去した時系列データから、直流電車に関連すると思われる信号変動をより顕著に抽出することができた。その特徴から、初年度に開発した適応信号処理を利用した自動解析ツールが十分使用できることがわかった。
(4)地震に関連する電磁気現象の抽出。
2002年10月房総ゆっくり地震に関連する電磁場データを(1)の方法で超高層信号を除去したところ、房総半島のアレー観測点に同時に地殻変動に関連すると思われる電磁場変動を顕著に抽出することに成功した。現在詳細に調査中である。
また、2000年伊豆諸島群発地震に関連する磁場データに関して超高層起源の信号を除去し、主成分解析を現在実施中である。

Research Products

• [Publications] Kopytenko, Y., Ismaguilov, V., Molchanov, O., Kopytenko, E., Voronov, P., Hattori, K., Hayakawa M., Zaitsev, D.: "Investigation of ULF magnetic disturbances in Japan during active seismic period"Journal of Atmospheric Electricity. Vol.22,No.3. 207-215 (2002)
• [Publications] Hayakawa, M., Hattori, K., Nickolaenko, A., Rabinowicz, L.: "Periodic variation on the Hurst exponent of the geomagnetic field"Journal of Atmospheric Electricity. Vol.23,No.1. 31-39 (2003)
• [Publications] 服部克巳: "地殻活動に関連するULF帯の電磁場変動"電気学会研究会資料. EMT-03-71. 53-57 (2003)
• [Publications] 芹田亜矢, 服部克巳, 吉野千恵, 原田誠, 伊勢崎修弘, 早川正士: "2000年伊豆諸島群発地震活動に関連するULF帯の電磁場変動"電気学会研究会資料. EMT-03-104. 7-12 (2003)
• [Publications] 原田誠, 服部克巳, 伊勢崎修弘: "ウェーブレット解析およびインターステーション応答関数法によるULF電磁場データの信号弁別"電気学会研究会資料. EMT-03-104. 29-34 (2003)
• [Publications] 服部克巳, 早川正士: "地震に先行するULF帯の電磁気現象"電気学会研究会資料. EMC-03-29. 23-28 (2003)
• [Publications] 原田誠, 服部克巳, 伊勢崎修弘: "応答関数法によるULF電磁場データの信号弁別の試み"電気学会論文誌 A部門誌. 123. 1159-1165 (2003)
• [Publications] 長尾年恭: "電磁気学的な手法による地震予知研究の新展開"電気学会誌. Vol.123,No.4. 236-239 (2003)
• [Publications] Singh, R.P., Singh, B., Mishra.P.K., Hayakawa, M.: "On the lithosphere-atmosphere coupling of seismo-electromagnetic signals"Radio Sci.. Vol.38,No.4. 4-1-4-10 (2003)
• [Publications] Hayakawa, M.: "Is earthquake prediction possible by means of electromagnetic phenomena?"Inst.Elect.Engrs.Japan, Trans.Fundamental and Materials. Vol.124 No.12. 3-4 (2004)
• [Publications] Hayakawa, M., Hattori, K., Ando, Y.: "Natural electromagnetic phenomena and electromagnetic theory : Review"Inst.Elect.Engrs.Japan, Trans.Fundamental and Materials. Vol.124 No.12. 72-79 (2004)
• [Publications] Harada, M., Hattori, K., Isezaki, N.: "Transfer function analysis approach for anomalous ULF geomagnetic field change detection"J.Physics and Chemistry of the Earth. (in press).
• [Publications] Hattori, K., Takahashi, I., Yoshino, C., Isezaki, N., Iwasaki, H., Harada, M., Kawabata, K., Kopytenko, E., Kopytenko, Y., Maltsev, P., Korepanov, V., Molchanov, O., Hayakawa, M., Noda, Y., Nagao, T., Uyeda, S.: "ULF geomagnetic field measurements in Japan and some recent results associated with Iwateken Nairiku Hokubu Earthquake in 1998"J.Physics and Chemistry of the Earth. (in press).
• [Publications] Hattori, K., Serita, A., Gotoh, K., Yoshino, C., Harada, M., Isezaki, N., Hayakawa, M.: "ULF geomagnetic anomaly associated with 2000 Izu islands earthquake swarm, Japan"J.Physics and Chemistry of the Earth. (in press).