2002 Fiscal Year Annual Research Report
既存構造物の実用的な信頼性評価法とライフサイクルマネジメント
Project/Area Number |
13650624
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森 保宏 名古屋大学, 環境学研究科, 助教授 (30262877)
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Keywords | 構造信頼性 / 限界状態設計法 / 耐力劣化 / 確率過程 / 荷重耐力係数 / 点検・補修 / ライフサイクルコスト |
Research Abstract |
構造物の耐力は,供用期間中に劣化する場合がある。このような耐力劣化は,構造物の供用期間が短い場合は無視することができたが,供用期間が長くなるに従い建物の使用性や安全性に大きな影響を与える。大量生産・消費・廃棄型の社会から脱却し,持続可能な発展を目指した循環型社会を構築するための構造物の長寿命化という社会要請の下,その耐久性を向上させる技術を開発する一方で,耐力劣化を考慮に入れた性能評価手法が必要となる。 本研究の1年目において,耐力の時間変化を考慮した構造部材の信頼性評価・解析を簡便に行う方法として,耐力の時間変化を表す劣化関数と確率的に等価な定数である劣化影響係数を提案し,その近似評価法を示した。この手法の精度は実用上問題のない程度であったが,確率分布関数の逆関数を評価する必要があり,実用上は難があった。本年は,極値統計理論より一般的な確率分布関数の上側の形状を用いて逆関数の評価を解析的に行う劣化影響係数の実用的な略算法を提案し,解析例により,従来の近似評価手法とほぼ同精度で評価可能であり,時間積分にガウス積分を用いる場合にも簡易かつ高精度に評価できることを示した。また,劣化関数の不確定性の影響についても検討し,劣化関数を確定として扱うことのできる範囲を明らかにした。 構造物の長寿命化を達成する上で,維持・管理の役割は極めて重要である。コストなどの制約条件の下で最適な維持・管理計画を策定する際には,一般に非線形の最適化問題を解く必要がある。劣化影響係数は,維持管理などによって耐力が不連続に時間変化する場合へも適用することができ,ライフサイクルコストを考慮した解析例より,劣化影響係数を用いた維持・管理計画の最適化は,劣化関数を用いた場合と比較して若干の誤差はあるものの計算時間を大幅に短縮できることを示した。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Mori, Y., M.Nonaka: "Load and Resistance Factors for the Assessment of Deteriorating Existing Structures"Structural Safety and Reliability. (CD-Rom). 8 (2002)
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[Publications] Mori, Y, T.Takada, H.Idota: "Practical Method to Determine Load and Resistance Factors Used in Limit State Design"Proc. of 1st ASRANet International Colloquium, Glasgow, Scotland. (CD-Rom). 14 (2002)
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[Publications] 加藤隆広, 森 保宏: "劣化関数の不確定性を考慮した信頼性評価手法"日本建築学会大会学術講演梗概集. B-1. 9-10 (2002)
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[Publications] 加藤隆広, 森 保宏: "既存構造物の信頼性評価に用いる劣化影響係数の実用的評価手法"日本建築学会東海支部研究報告集. 第41号. 161-164 (2003)