2002 Fiscal Year Annual Research Report
オランダ王国における「ホフィエ(都市型福祉施設)」の空間構成に関する研究
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13650698
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Research Institution | Kyushu University (Faculty of Design) |
Principal Investigator |
石田 壽一 九州芸術工科大学, 芸術工学部, 助教授 (20284581)
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Keywords | オランダ / ホフィエ / 都市型福祉施設 / 高密度都市居住 / 空間構成 |
Research Abstract |
本研究はヨーロッパにおけるオランダ王国の「ホフィエ(hofje)」と呼ばれる都市福祉施設の空間構成的弁別性を明らかにすることを目的としている。対象とされる建築類型は、オランダ地域で13,14世紀に始まる後発のカトリック教化に連繋して広がった社会福祉活動を胎動として主に15世紀以降に独自の施設が継続的に建設され、オランダ全土に約200事例が現存する。同類型は救貧院や老人施療院などの社会福祉の用途建物としてオランダ共和国のみに現存し認知されるユニークな都市福祉類型として知られる。 同施設は、主に俗人の富裕階級が慈善目的に貧民や老人のために供給した居住施設として建設が始まった。運営は宗教的財源もしくは都市行政的基盤から独立している点に特徴が見られる。宗教革命以前はその多くが富裕商人層の霊的救済行為として建設された施設でもあった。中世期のヨーロッパ諸国における私立救貧院や施療院の専門分化にあって、オランダにおいては、新教移行後も都市為政者から財政的に独立を保ちえたことで、現在もなお独自の形態を維持した活動を続ける。これまで維持・管理をおこなう団体等が個別に史料(財務的資料など)を保管しているほか、設立概要を個別、都市別、オランダ全土といった対象区分によってまとめた文献や研究論文が数多く刊行/発表されている。しかしいずれも設立過程の概観や時事の記録、特有の管理組織形態に関する論考であり、ホフィエの施設建物が為す空間構成的特質についての記述は、断片的記述内容にとどまる。 ホフイェの空間構成を特徴付ける内包空間(中庭)については、同地域の20世紀初頭の住宅法改正後の大規模な開発によって建設された閉鎖型住区から開放型住区へと発展する一連の集合住宅形式の原型的な特徴を具備しており、集合住宅の発展なかで再解釈されたことが複数の研究者によって指摘されている。しかしながらホフィエの施設建物を含めた全体に関しては、一般的な特徴を紹介するに留まり、各事例に観察される多様な構成については詳述されていない。 当該研究期間内において、オランダに現存する200余のホフィエについて現地踏査を行い、現状を確認すると共に、17世紀を中心に集中的な建設が行われる同類型の空間構成について、集中的な資料集集を行い、建築意匠論的視点から構成的弁別性に考察を加え、構成類型の抽出ならびに継時的発展について包括的な考察を加えた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 石田壽一他: "オランダおけるホフィエ型住居に関する研究(その1)"(社)日本建築学会研究報告九州支部. 第40号・3. 685-688 (2001)
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[Publications] 石田壽一他: "オランダにおけるホフィエ型住居に関する研究(その2)"(社)日本建築学会研究報告九州支部. 第40号・3. 689-692 (2001)
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[Publications] 石田壽一他: "オランダにおけるホフィエの空間構成に関する研究"(社)日本建築学会2001年度大会学術講演梗概集. F-2分冊. 601-602 (2001)
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[Publications] 石田壽一他: "オランダにおけるホフィエの空間構成に関する研究(その2)"(社)日本建築学会研究報告九州支部. 第41回・3. 513-516 (2002)
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[Publications] 石田壽一他: "水域隣接都市におけるホフィエの規模と建設立地について"(社)日本建築学会2002年度大会学術講演梗概集. F-2分冊. 537-538 (2002)
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[Publications] 石田壽一他: "オランダおけるホフィエの空間構成に関する研究(その3)"(社)日本建築学会研究報告九州支部. 第42号・3. 513-516