2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13650705
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
加藤 邦男 大阪産業大学, 工学部, 教授 (20025927)
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Keywords | 山の辺の集落 / 集落景観 / 空間構造 / 都市人類学 / 生駒山系 / 東高野街道 / 河内地方 / 居住環境 |
Research Abstract |
1.研究対象集落の整理:生駒山系の麓を山系に平行して南下する東高野街道沿いの集落のうち、山麓の扇状地に張り付く「山の辺」の集落群を原初的に有意味なものとして注目し調査したところ、四条畷市、大東市、東大阪市、八尾市の範囲に29集落を限定することが出来た。但し、近鉄奈良線が生駒山系に直交する石切地区では、近代の都市化によって江戸末、明治期以来の伝統的集落形態がほとんど失われていることが判明した。 2.集落景観の変化過程の検討:以上の集落について、江戸期(安政年間、18世紀)明治期、終戦直後の昭和期、現代の集落形態を、各時期の地図及び航空写真を、縮尺を、ベースマップとする都市計画図(1/2,500)に合わせて重ね合わせ、変化過程を推定し、江戸期、明治時代の集落が現時点でもほぼその形態を抽出することができた。さらに戦後の都市化による都市形態の変化を地図上に示した。 3.集落の実地調査:各集落を実地踏査し、特徴的な景観をデジタルカメラにより収集し、各集落について神社、寺院の位置を特定し、神社については祭神を記録した。江戸期(安永年間)、明治-昭和前期(終戦以前)、現在の神社の分布変化と集落群との関係が整理された。 4.集落景観の記述と変容の歴史過程の記述:昨年に引き続き、各神社の系譜と近隣関係をできうる限り整理した結果、里山と集落の関係を「山の辺」の集落景観として捉え得ることがわかり、これは、日本人の他界観と伝統的居住環境の空間的構造と意味を示すものであり、その空間構造が本地域の景観ゲシュタルトとなっていること、また同時にそれが、近年の都市化と近代化によってほとんど見分けられないほど、伝統的景観が喪失していることを示した。 5.都市人類学的理論化:以上のような得られた知見を整理して、フランスのCNRS研究員フィリップ・ボナン教授(都市人類学専門)他と意見交換を行い、より一般的な都市景観成立の理論を構築し、都市人類学的理論化と比較する作業が残された課題となっている。 以上の成果は、日本建築学会の論文集、および、この方面でとくに顕著な発展を見せるフランスの研究機関への公表を予定している。
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