Research Abstract |
本来延性である固体金属にある特定の液体金属を付着させて力を加えると,固体金属は延性を失い,脆性破壊するようになることは,液体金属脆化として知られている.アルミニウムと液体ガリウム,銀と水銀,銅と水銀などの組み合わせも液体金属脆化を起こす組み合わせとして知られている.脆化は特定の固体金属と液体金属の組み合わせでしか起こらずに,液体金属脆化の特異性と呼ばれている.また,少なくとも上であげた3種類の金属-低融点金属の組み合わせでは,低融点金属が固体金属の粒界中に高速浸透し,粒界の強度を下げることにより脆化が起きていることが昨年度までの研究でわかっている. アルミニウムとガリウム,銀と水銀,銅と水銀の組み合わせについて,脆化のおきやすさを次のようにして測った. (1)試験片表面に低融点金属を付着し,一定時間保持した. (2)表面の低融点金属を除去したあと引張試験を行い,脆性破面の面積と最大応力を,低融点金属を付着していた時間を変えて測定した. (3)ガリウムは容易に過冷却するので,アルミニウムとガリウムの組み合わせでは,融点以下の液体状態,固体状態,両方での測定を行った. 脆化が起きるまでの時間と,薄膜を使って測った粒界への低融点金属の浸透速度を比較した.アルミニウムとガリウム(35℃液体,20℃液体,20℃固体,10℃固体),銀と水銀,銅と水銀の組み合わせで,浸透速度は約3桁にわたって変化するが,大雑把に言って脆化開始までに必要な付着時間が浸透速度の逆数に比例しているということができる.このことから,液体金属脆化の組み合わせ特異性について議論する場合には,時間のファクターも考慮する必要があること,いくつかの論文で,脆化が起きるか起きないかについて異なる報告があるが,それは,時間のファクターを考えなかった可能性があることを指摘できる.
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