2003 Fiscal Year Annual Research Report
分子軌道法を基にした分子動力学法の非晶質酸化物への適用
Project/Area Number |
13650734
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 博之 東京大学, 生産技術研究所, 助教授 (10193608)
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Keywords | 分子動力学法 / ガラス構造モデル / 分子軌道法 / 電荷移動 / SiO_2ガラス / 原子間ポテンシャル |
Research Abstract |
本研究は、電子状態をある程度考慮した分子動力学法を作成し、非晶質酸化物への適用性を評価することを目的としている。 (1)非経験的分子軌道法であるGAMESSを用いて、SiO_4、PO_4,BO_3、BO_4を基本構造単位とするクラスタを作成し、個々の結合距離や結合角を変化させたエネルギー計算から、個々のSi-O, P-O, B-Oの原子対ポテンシャルを2体あるいは3体ポテンシャルで近似し、得られた原子間ポテンシャルを用いて、単成分の非晶質の構造モデルを作成した。これまでの構造解析による知見と比較することにより、用いたポテンシャルの評価を行った。 分子軌道法によるクラスタのエネルギー変化をある程度再現できる2および3体ポテンシャルを導出することができた。また、これを用いることにより、動径分布関数をある程度再現できることを確認することができた。しかしながら、SiO_2ガラスにおける振動スペクトルにおいては、Si-O-SiやO-Si-Oの3体ポテンシャルを用いると、実測の振動モードとの対応が2体ポテンシャルを用いた場合より、悪くなることがわかった。Si-O-SiやO-Si-Oの3体ポテンシャルの導入は、原子配列と物性とを同時に満たすポテンシャルには不適当であると判断した。 (2)したがって、原子・イオン間のポテンシャルの基本に立ち戻り、イオン結合性のみを考慮した2体ポテンシャルを用いて、非晶質状態の成り立ちの再検討を行った。単成分の非晶質状態の構造モデルでは、陰イオン2配位となり、陽イオンを陰イオンで囲む配位多面体を構造単位とする構造において、非晶質状態が安定になることを見出した。 (3)電子親和力・イオン化ポテンシャルを基に、分子軌道法から得られる電子間反発の原子間距離依存性を考慮した電荷移動分子動力学法を作成し、一部の酸化物ガラスにおける光学的塩基度と配位構造との関係を調べた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] H.Inoue, K.Soga, A.Makishima: "Structure around the Tm3+ ion in a glass based on AlF3"Journal of Non-Crystalline Solids. 331. 58-69 (2003)
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[Publications] Y.Wakabayashi, H.Inoue 他5名: "Positronium annihilation study of porosity in silica xerogels prepared by a sol-gel process"Journal of the American Ceramic Society. 86(9). 1625-1627 (2003)
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[Publications] H.Inoue, K.Soga, A.Makishima: "The effects of crystal-fields on the optical properties of Pr : ZBLAN glass"Journal of Non-Crystalline Solids. 325. 282-294 (2003)
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[Publications] K.Soga, H.Inoue 他2名: "Optical properties of new low-phonon SnF_2-PbF_2-ZnF_2 glasses"Journal of Non-Crystalline Solids. 315. 1-6 (2003)
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[Publications] H.Inoue, K.Soga, A.Makishima: "Energy transfer between Er^<3+> ions in ZBLAN glass"Physics and Chemistry of Glasses. 44(6). 422-430 (2003)