Research Abstract |
本研究では、Bi-2223単相粉末にTeを添加した前駆体ペレットからBi-2223相単結晶ウィスカーの育成に成功した.Bi-2223ウィスカーのc軸方向電流-電圧(I-V)特性において固有ジョセフソン効果による明瞭なブランチが観察され,欠陥のほとんどない単結晶であることが確認された.さらに、R-123系は、磁束のピン止め力が大きく,液体窒素温度でも高い臨界電流密度が期待され,実用の観点から有利である.また、Rのイオン半径はその種類によって0.861〜1.045Åの範囲があり、それによって各サイトの置換が起こり,超伝導臨界温度Tcや臨界電流密度Jcが変化することが考えられる.はじめにこれらの知見をもとにTeとCaを添加したY_1Ba_2Cu_3Te_<0.5>Ca_<1.0>O_x前駆体ペレットからY-123相ウィスカーの育成に成功し,Tc直下でも高いJcを示した.つぎに、RがLaからLuまでのウィスカーを育成し、R-123相単結晶ウィスカーの成長する部分溶融温度,その結晶各サイトの置換とその量,それにともなう臨界温度Tcの変化などに及ぼすRの3+イオン半径の影響について調べた.成長したウィスカーは,平滑面のXRDパターンがR-123相の(001)面回折線に一致し,c軸方向にab面が積層した構造である.イオン半径が大きくなるほどウィスカー成長の部分溶融温度は上昇する傾向にある.これは,Rのイオン半径が大きくなるにしたがってR-123相の融点が高くなることに依存している。3+イオン半径が0.88〜096Å近傍のY, Tm, Er, Ho, Dy, Gd, Eu, SmのR-123相ウィスカーは,1.0〜3.0mmに成長する.R-123相ウィスカーは,全てでCaを含有するが,Teを含有しない.希土類元素のイオン半径の小さいTm, Er, Ho, Dy系R-123相では、CaがRサイトとBaサイトの両方を置換,Y系では,CaがYサイトのみを置換,イオン半径の大きいGd, Eu, Sm, Nd, La系は,CaとRがBaサイトを置換している.これらの置換量は,特にDy系からRの3+イオン半径が大きくなるにしたがって増加する傾向にある.Rサイトのイオン半径が大きくなると結晶構造を維持するためにBaサイトが縮むようにBaよりイオン半径の小さいRおよびCaがBaサイトを置換するものと考えられる。また,Eu系の置換量が若干多いのは,Euが2+と3+の価数をもち,イオン半径の大きい2+が12%程度を占めていると仮定することが説明できる.臨界温度Tcは,Rの3+イオン半径r_iがDyのそれより大きくなると急激に低下する.Tcは,RサイトにCaが置換のとき80K近傍であるが,BaサイトをCaとRの両方が置換するとTc35〜50Kと急激に低下する.R-123相単結晶ウィスカーは、c軸方向の固有ジョセフソ効果の利用により、THz帯の高周波デバイス、単電子対デバイスなどの実現に貢献するものと考えられる。
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