2002 Fiscal Year Annual Research Report
部分溶体化技術を利用した高靭性マルテンサイト系ステンレス鋼の製造
Project/Area Number |
13650801
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高木 節雄 九州大学, 工学研究院, 教授 (90150490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨村 宏紀 日新製鋼(株), ステンレス高合金研究部, 主任研究員
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Keywords | 部分溶体化処理 / マルテンサイト系ステンレス鋼 / 未固溶炭化物 / オーステナイト粒径 / 靭性 |
Research Abstract |
本研究では、これまでに、Fe-12%Cr-0.7%C合金を用いることで、未固溶炭化物を利用し、熱処理のみで旧オーステナイト粒径を微細化することによって、高靭性マルテンサイト系ステンレス鋼の開発を試みてきた。しかし、これを実際の工業用の大型部材に適用する場合、製品のサイズが実験室レベルの場合と比べて大型であるために、冷却中に大きな熱応力が発生し焼き割れを生じてしまうことから、炭素量を0.3%程度まで低下させる必要があることがわかった。ただし、Fe-12%Cr-C系の合金において共析組成の炭素濃度は、約0.1%であることから、改良後の組成においても未固溶炭化物を利用したオーステナイト粒の微細化効果は十分に期待できる。さらに、冷却速度の遅い中心部では冷却中に一部共析変態が起こり不均一な組織となるため、実際の焼入焼もどしによる調質処理を行う前処理段階である成型加工時に問題が生じることがわかった。 一方で、実際の工業用のラインでは熱処理に加えて加工を施すことから、加工熱処理を利用して組織の均一化を図り、上記の問題の解決を試みた。Fe-12%Cr-0.3%C合金をオーステナイトの未再結晶域で加工することによって、基地中にサブグレインなどの核生成サイトを多数導入した。その後の冷却過程では冷却速度が遅い場合でも、加工性を劣化させる共析組織は生成されず、炭化物が基地中に均一に分散することが明らかになった。また、基地の結晶粒径も数十ミクロンと微細になっていることから、この組織を出発材として調質処理を行う際にも、オーステナイト粒径は十分に微細となると考えられる。以上のような手法を用いることによって、実際の工業ラインにおいても高靭性マルテンサイト系ステンレス鋼の作製が可能となることが示唆された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 三上真人, 土山聡宏, 高木節雄: "12%Cr-0.3%C鋼における恒温変態挙動"鉄と鋼. 87・1. 49-54 (2001)
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[Publications] 稲葉智一, 三上真人, 小野嘉則, 土山聡宏, 高木節雄: "部分溶体化処理した12%Cr-0.3%C鋼の恒温変態挙動"鉄と鋼. 87・9. 613-618 (2001)
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[Publications] Toshihiro TSUCHIYAMA, Yuji MIYAMOTO, Setsuo TAKAKI: "Recrystallization of Lath Martensite with Bulge Nucleation and Growth Mechanism"ISIJ International. 41・9. 1047-1052 (2001)
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[Publications] Toshihiro TSUCHIYAMA, Setsuo TAKAKI: "Recrystallization Mechanism of Lath Martensite in High Chromium Steel"Recrystallization and Grain Growth Volume 2. 803-808 (2001)
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[Publications] 高野光司, 土山聡宏, 高木節雄: "12%Cr-0.1%C鋼の等温変態により析出する炭化物の分散状態に及ぼす前加工の影響"鉄と鋼. 88・11. 779-785 (2002)