2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13650823
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 憲司 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00216714)
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Keywords | 水和電子 / イオン対 / 誘電率 / クーロンポテンシャル / 放射線分解 / 水和 / アレニウス / 水素イオン |
Research Abstract |
水の誘電率が大きく変化することに着目し、水和電子と種々のイオンとの反応速度の温度依存性について実験を行った。イオンとしては、高温水中での水和構造などについてある程度報告例がある硝酸イオンおよび水素イオンを取り上げた。水和電子と硝酸イオンとの反応速度の温度依存性はアレニウス型依存性から大きくずれて、温度上昇に伴い反応速度は急激に遅くなった。一方、水和電子と水素イオンとの反応では、アレニウス型から予想されるよりも速くなった。このような温度依存性は、イオン間の静電ポテンシャルを考慮した遷移状態理論により定性的に説明できた。つまり、活性化自由エネルギーが静電的な項と非静電的な項よりなると仮定し、静電的な項が電荷-電荷相互作用ポテンシャルにより表せる反応モデルが適用できた。 臨界温度以上では、イオン対の影響と考えられる影響が現れた。つまり、水和電子と硝酸イオンとの反応速度は急激に上昇した。これは、イオン対を形成することにより、反応分子間に作用する反発的クーロン力が減少したためと考えられる。 しかし、このような単純なモデルでは、水分子の配向の情報などは一切含まれていない。さらに、イオン間の静電効果を考慮したDebye因子は390℃、20Mpaの水に対しては、途方もない非現実的な値を予想し、同符号の電荷のイオン反応は生じ得ないことを予言することが判明した。そのような誘電率が小さい水溶液中の電解質理論は、様々な解決すべき問題が残されていることが改めて浮き彫りとなった。
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Research Products
(1 results)