2002 Fiscal Year Annual Research Report
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13650885
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Research Institution | OSAKA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
宮武 陽子 大阪大学, 基礎工学研究科, 助手 (00166183)
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Keywords | 凝縮相 / 低温有機ガラス / 放射線還元法 / 1B金属 / ESR / 分光吸収スペクトル / 定常発光・励起スペクトル / 時間分解蛍光寿命 |
Research Abstract |
生体系における金属イオン・原子の果たす機能や効果の解明に関する基礎的研究として、凝縮相中に放射線還元法で生成する1B族金属原子の磁気的・光学的特性を調べ報告してきた。 水や有機分子の溶媒中に、金属原子を空間的にほぽ均一に分布させるために、金属イオンを溶かした溶液を放射線照射して、溶媒和電子によって金属イオンを還元させ金属原子をつくるという、放射線を利用した優れた方法、これが放射線還元法である。昨年度はこの方法により低温有機マトリックス中に生成させだ銅原子にういての磁気特性、光学特性の観測を行い、励起銅原子と溶媒分子との蛍光性コンプレックスの生成を確認した。本年度は同様の実験手法を金に対して適用した。とりわけ本研究に先立ち代表者らが、凝縮相中における放射線還元法による還元金原子の生成をESR測定で初めて確認した系、即ちAuClP(C_2H_5)_3/MTHF系について、分光吸収スペクトルおよび定常発光・励起スペクトル、更にN_2レーザーおよび色素レーザーを用いた時間分解蛍光スペクトルの観測を行った。観測結果の詳細な解析を基に、銀、銅における結果との比較検討から、凝縮相中における、溶質-溶媒およぴ溶質-溶質間相互作用の静的・動的挙動に関する1B族金属としての共通性と固有性を明らかにするべく考察を行った。例えばESR観測からは、得られた吸収線の組み合わせに対して各々ESR吸収遷移の同定を行い、その同定に基づいてBreit-Rabi関係式の数値解析により求めたhyperfine splitting値aが、Au^0、Cu^0ともAg^0と同じくa_<free>からの負シフトを示した。この結果は凝縮系での還元原子上の不対スピン密度のリガンド上への非局在化を示すもので、非局在化の程度はCu^0が最も大きく、Au^0はほぼAg^0はと同程度であった。同解析で求めたg_<Jfree>に対するg_Jについては、Ag^0は基底状態2S_<1/2>へのp軌道の混入と解釈される負シフトであったのに対し、Au^0、Cu^0はともに正シフトを示し、有機マトリックス系における異方性相互作用の存在を裏付けた。また銀で確認されたdimer cation生成は銅、金では確認されなかった。光吸収スペクトルは銀、銅の場合と同様にに希ガスマトリックス系に比べ赤方シフトし、溶媒との強い相互作用を示唆した。凝縮系特有の吸収バンドが金の場合も銅、銀の場合と同じく観測され、強い溶質濃度依存を示した。定常発光・励起スペクトル測定、および時間分解蛍光寿命測定からは、金においてもまた励起金原子と溶媒分子との蛍光性コンプレックスの生成を確認したが、イオン半径の大きさ、配位数の違いや5d-6s間電子遷移エネルギーが6s-6p間のそれより小さい等の特異性を反映し、発光機構はより複雑化していること等が明らかとなった。
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Research Products
(9 results)
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[Publications] M.Hoshino: "Low Temperature γ-Radiolysis of Metal Complexes in Rigid Solutions"KURRI Progress Report. 2001, Sec.I. 95-95 (2002)
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[Publications] Y.Miyatake: "Spectroscopic Behavior of 1B Metal Atoms in Aqueous and Organic Solid Solutions"KURRI Progress Report. 2001, Sec.I, 6.1-4. 130-130 (2002)
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[Publications] H.Hase: "Design of Molecules Controlling Biological Functions by Means of Non-Equilibrium Radical Reactions"KURRI Progress Report. 2001, Sec.I, 6.1-5. 131-131 (2002)
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[Publications] Y.Miyatake: "Spectroscopic Behavior of 1B Metal Atoms in Aqueous and Organic Solid Solutions"KURRI Progress Report. 2001, Sec.I, 6.1-4. 130-130 (2002)
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[Publications] 宮武陽子: "放射線還元で生成する1B金属原子の溶媒中における挙動"京都大学原子炉実験所学術講演会、報文集. 36. 82-85 (2002)
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[Publications] 長谷博友: "放射線還元で生成するフラーレンのラジカルアニオンの挙動"京都大学原子炉実験所学術講演会、報文集. 36. 86-86 (2002)
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[Publications] 宮武陽子: "凝縮相中における1B族金属原子の蛍光特性-Au^0の時間分解蛍光寿命測定"第45回放射線化学討論会(九州大)、講演要旨集. 45. 1P03 (2002)
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[Publications] 田島右副: "低温マトリックス中γ線照射によるフラーレン酸化物アニオン生成"京都大学原子炉実験所学術講演会、報文集. 37. 121-125 (2003)
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[Publications] 宮武陽子: "凝縮相中における1B族金属原子の物性と反応-放射線還元法により凝縮相中に生成するAu原子の蛍光特性"京都大学原子炉実験所学術講演会、報文集. 37. 146-149 (2003)