2002 Fiscal Year Annual Research Report
蛍光性キラルセンサーの設計と評価:単一分子システムから組織化アプローチ
Project/Area Number |
13650911
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
久保 由治 埼玉大学, 工学部, 助教授 (80186444)
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Keywords | 蛍光センサー / イソチオウロニウム基 / 組織分子膜 |
Research Abstract |
あるハロゲン化アルキルからアルカンチオールヘ変換する際の鍵中間体として生成するイソチオウロニウム類は比較的安定に存在する。そして天然のアミノ酸であるアルギニン残基のグアニジン基と類似構造をもちカルボン酸イオンやリン酸イオンのようなオキソアニオン類と強い親和性を持つ特徴がある。申請者らはこれをセンサー分子に組み込む設計を考え、具体的にはそのイソチオウロニウム基の電子欠損性を分子内で適当な蛍光団と組み合わせたところ、その蛍光特性を、光誘起電子移動(PET)過程を通じて効果的に制御できることを発見し、その性質を有機アニオン種の蛍光センシングに適用できた(J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2,1455(2002))。本年度は、キラルセンシング可能な単一分子システムへの拡張を検討するとともに、組織化アプローチを試みた。その結果、後者について進展がみられたので、ここに記す。すなわち、組織化アプローチにおいて、イソチオウロニウム基が親水頭部になりえることに着目し、長鎖アルキル基を導入した関連両親媒性化合物、2-[S-(3,5-ジアルコキシ)ベンジル-N'-メチル-N-イソチオウロニオ]メチル]ナフタレン ブロマィド、(1)を合成した。そしてそれらを組織分子膜とすることにより、気-水界面に認識部位の固定を試みた。気-水界面での水素結合は、バルク中よりも効果的に作用するので、界面は水素結合による分子認識にとって有利な場を提供する。合成は、まず、3,5-ジヒドロキシベンジルアルコールから2段階で3,5-ジアルコキシベンジルブロミド(2)へと誘導した。一方、2-メチルナフタレンから2-[(N-メチルチオウレイド)メチル]ナフタレン(3)を合成し、2と3をエタノール中で反応させることで目的の1を得た。そして、1をクロロホルム溶液から蒸留水(pH5.8,10℃)上に単分子膜として展開し、表面圧-面積曲線から安定な凝縮膜の形成を確認した。さらに、下層水に10^<-4>〜10^<-6>Mのリン酸二水素ナトリウムを加えると、表面圧20mNm^<-1>以下で、単分子膜は著しく膨張した。これは、気-水界面での相互作用を示唆する。その組織分子膜の調製法およびその特性について、2003年3月開催の日本化学会春季年会で発表される。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Y.Kubo, S.Ishihara, M.Tsukahara, S.Tokita: "Isothiouronium-derived simple fluorescent chemosensors of anions"Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 2. 1445-1460 (2002)
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[Publications] T.Tozawa, T.Tachikawa, S.Tokita, Y.Kubo: "Chirality induction in a dibenzo-30-crown-10 congener promoted by an ion-pair coordinated self-assembly"New Journal of Chemistry. 27. 221-223 (2003)