2002 Fiscal Year Annual Research Report
ダイズにおける紫外線UV-B耐性機構とシグナル伝達の分子的解析
Project/Area Number |
13660002
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
赤田 辰治 弘前大学, 遺伝子実験施設, 助教授 (10250630)
|
Keywords | 紫外線UV-B / MYB転写因子 / シグナル伝達 / タンパクのリン酸化 / ダイズ |
Research Abstract |
転写因子をコードする植物のMYBスーパーファミリーはゲノムあたり百コピー以上の遺伝子が存在し、それぞれが特有の生理的役割を担い、全体として多様な生理的現象を調節していると考えられている。本研究では紫外線UV-Bにより発現上昇する遺伝子GmMYB29B1の分子的解析により、UV-Bシグナル伝達経路の解明を目的としている。本年度において得られた成果は以下の通りである。 1、転写因子GmMYB29B1を「つりエサ」としてこれを認識するタンパク質を同定する為にYeast-two hybridシステムを用いた実験を行った結果、目的とは異なるがこの遺伝子産物が酵母の細胞内において転写因子としての働きを持つことが判明した。 2、GmMYB29B1の転写活性化機能を担う一次構造を特定するために様々なB1変異体を作製し、酵母の細胞内における転写因子としての機能を解析した。その結果、転写活性化機能は酸性アミノ酸クラスターIIIからC末端に至る26アミノ酸残基にあり、いくつかの酸性アミノ酸を中性アミノ酸に置換することによって機能が著しく減退すること等が判明した。 3、GmMYB29B1が転写調節するターゲット遺伝子の一つと想定されていたカルコンシンターゼ遺伝子(GmCHS8)のプロモーター配列を認識することを証明する為に、大腸菌において大量発現させたGmMYB29B1のDNA結合領域とGmCHS8のプロモーター配列の結合をEMSA解析により検出し、これがH-box配列に特異的な認識によるものであることを確かめた。 4、UV-Bシグナル伝達経路と酸化的ストレスの関わりを調べる為に、酸化的ストレスの誘導剤・抑制剤と紫外線UV-B照射を組み合わせた実験を行い、GmMYB29B1の発現に至るシグナル伝達経路に一酸化窒素(NO)の関与が強く示唆された。 5、大腸菌において発現させたGmMYB29B1が植物のタンパク粗抽出液によりリン酸化を受けることが判明した。このリン酸化がシグナル伝達に関わると考えられることから、現在はこのリン酸化酵素の精製を中心に実験を進めている。
|