2002 Fiscal Year Annual Research Report
低分子量Gタンパク質Racの発現調節による病害抵抗性植物の分子育種
Project/Area Number |
13660048
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
小林 一成 三重大学, 生物資源学部, 助教授 (90205451)
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Keywords | 低分子量Gタンパク質 / PRタンパク質 / サリチル酸 / タバコ |
Research Abstract |
低分子量GTP結合タンパク質Racは、動物細胞において細胞骨格やNADPHオキシダーゼを介した免疫機構の制御に関与している。植物細胞では活性酸素種の生成を通して感染防御に関与する可能性が示されているが、その機能の詳細は明らかでない。昨年度に引き続き、タバコRacの機能を明らかにする一環として、Rac遺伝子を過剰発現させたタバコ形質転換体の解析を行った。Rac3過剰発現体に病原菌であるPseudomonas syringae pv tabaci(Pst)を接種し、接種葉における酸性PR遺伝子の発現を調べた結果、Rac3過剰発現体では野生型と比較して早期に高いレベルの酸性PR遺伝子発現が認められ、LARが迅速に誘導された。さらに、非病原菌であるPseudomoanas syringae pv glycineaを接種し、上位葉に接種したPstの増殖を調べた結果、野生型に比べ有意に増殖が抑制された。さらに、上位葉における酸性PR遺伝子の発現とサリチル酸の蓄積を調べた結果、野生型ではいずれも増加しないのに対してRac3過剰発現体ではいずれも著しく増加した。以上の結果から、Rac3過剰発現体ではLARの迅速な誘導のみでなく、通常はPaeudomonasの接種によって誘導されないSARが誘導されることが明らかになった。Racは、植物の病害抵抗性において活性酸素(ROS)生成に関与することが既に知られていることから、Rac3過剰発現体に認められた現象がROSを介するか否かをさらに検討した。その結果、Pstを接種したRac3過剰発現体と野生型との間にはROS生成に差は認められず、NADPHオキシダーゼの阻害剤であるDPIはRac3過剰発現体における酸性PR遺伝子の発現を阻害しなかった。以上の結果から、タバコRac3がROS生成とは無関係にSAシグナル伝達を調節することが示唆された。本研究およびこれまでに知られている知見から、Rac3が含まれるグループIIaのRacは植物に特有であり、病害を含む様々なストレス応答に関与する可能性が推定される。以上の結果から、グループIIaのRacは、植物に病害抵抗性を付与するための分子育種標的として極めて有望であると考えられる。
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Research Products
(1 results)