2002 Fiscal Year Annual Research Report
カイコRNA結合蛋白質の発生過程特異的機能の解析によるmRNA制御機構の解明
Project/Area Number |
13660060
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
古澤 壽治 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (70127166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉村 順夫 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (20273542)
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Keywords | RNA結合蛋白質 / カイコ / 外来遺伝子発現 |
Research Abstract |
カイコのTIA-1相同性蛋白質(本研究の終了時にBmTRN-1と命名)は、変態期特異的に様々な組織で発現するRNA結合蛋白質である。TIA-1ファミリーの蛋白質は、細胞死誘導性に加え、最近では転写後から翻訳にかけての蛋白質産生制御機構にも関与した働きを持つと考えられてきた。本研究ではカイコ細胞内でのBmTRN-1蛋白質の役割を明らかにする目的で、BmTRN-1アンチセンスDNAによるノックダウン抑制細胞を作成し、この細胞系における様々な外来遺伝子発現制御を調べた。その結果アンチセンス抑制中の細胞で、4種類の真核生物由来蛋白質の蛋白質合成量が増加した。またBmTRN-1発現抑制により、これら外来遺伝子の転写産物存在量が増加することも判明した。一方、カイコ細胞で恒常的に発現している内在性チューブリンの転写産物量調節には、BmTRN-1は全く関与していないことが明らかになった。こうした結果からカイコBmTRN-1は、細胞内で特に外来遺伝子転写産物を認識・排除する機構に関与した役割を持つことが考えられる。またBmTRN-1の認識の強さは、外来転写産物の翻訳可能領域の配列に依存することから、転写産物のイントロン-エキソン切り出しなどの成熟過程に生ずる構造的不適合性をBmTRN-1は認識すると推察した。現在ヨトウガ細胞系でのTRN-1ノックダウン系構築のために、TRN-1遺伝子解析も進めている。 これまでに昆虫細胞を用いた外来蛋白生産系、特にウイルスやプラスミドベクターによる薬理活性物質発現系において、期待通りの発現量が得られないなどの不測の結果が多数見られたが、本研究の成果は、こうした人工的外来蛋白発現系の欠点であるBmTRN-1の外来転写物排除機構の解明と、同時にこの欠点を克服する技術の創出につながるものと期待される。
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