2001 Fiscal Year Annual Research Report
鉱さいを活用した持続的かつ環境にやさしい水稲生産技術の開発
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13660061
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 豊彰 東北大学, 大学院・農学研究科・附属農場, 助教授 (10176349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三枝 正彦 東北大学, 大学院・農学研究科・附属農場, 教授 (10005655)
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Keywords | 鉱さい / 酸化鉄 / ケイ酸 / メタン放出 / 還元 / 水稲収量 / 水稲根活力 / メタン酸化 |
Research Abstract |
本年度は,鉱さい肥料の主成分である酸化鉄とケイ酸が水稲生育とメタン放出量に対する効果を検討した.主な着眼点は,酸化鉄添加は水稲生育を向上させるか?,ケイ酸添加はメタン放出量を低下させるか?,これらの効果は土壌特性によって変動するか?,である. 川渡土壌(黒ボク土)は酸化鉄が少なく,大潟土壌(沖積土)は易分解性有機物が多いために,メタン生成能が高い.色麻1土壌(黒ボク土)と色麻2土壌(沖積土)は酸化鉄が多く,メタン生成能は低い.このように酸化鉄含量およびメタン生成能の異なる4土壌に非晶質酸化鉄(実験室で合成)またはシリカゲル(市販品)を施用基準に従って、それぞれ14.3gFe_2O_3/pot(2.5kg dry soil),1.41g/potを混合施用した.さらに,充分量のN,P_2O_5,K_2O(各1g/pot)と標準量の稲わら(10g/pot)を施用し,野外での水稲栽培条件でメタンフラックスと水稲の籾重を資材無施用区と比較した. 水稲収量(籾重):酸化鉄処理によって土壌が強還兀状態となる大潟土壌では低下し,還元が中庸な色麻2土壌では増加した.酸化鉄添加は強還元土壌では2価鉄生成が非常に多くなり,水稲に鉄過剰を生じさせたと考えられる,還元発達が中庸な土壌では酸化鉄は還元環境で生成する硫化水素の障害を緩和する可能性があることが示唆された.ケイ酸処理によって水稲のケイ酸含量が高まり,4土壌において籾重が増加した,ケイ酸処理は稲の光合成能を向上させたと考えられる. メタン放出量:酸化鉄処理は土壌における還元の進行を抑制し,いずれの土壌においてもメタン放出量を低下させた(平均で18%)、ケイ酸処理は水稲根の活力が高い最高分げつ期のメタンフラックスを4土壌で低下させた.ケイ酸は水稲根の酸化能を向上させ,根圏におけるメタンの酸化分解を促進した可能性がある. 以上の結果より酸化鉄,ケイ酸を含む鉄鋼スラグがメタン放出量を抑制し,水稲生育を向上させる可能性が示唆されたが,ポット試験での評価には限界があり,圃場条件での検討が必要と考えられた.
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