Research Abstract |
昨年度の研究成果から,ブルーム型台木カボチヤにおけるSiのMn過剰症軽減効果には,葉アポプラスト液相部分のMn濃度の低下が大きく関与していることが明らかとなった。そこで,この点についてさらに検討するため以下の実験を行なった. (1)アポプラスト液相部分で,SiとMnが直接的に反応する可能性について検討するため,0.2mM硫酸マンガン溶液に1.0mMケイ酸溶液(pH6.0)を共存させ,1週間にわたってMnのESRスペクトル変化を観察した.ESRスペクトルの形状,強度ともに顕著な変化は認められず,アポプラスト液相部分でSi-Mn複合体が形成される可能性は低いと考えられた. (2)1.67mM Si施用または無施用下で,250μM Mnを2または4日間吸収させた第3葉から,細胞壁画分を調製した.細胞壁画分中のMnを,吸着態,マンガン酸化物,残さの各画分に連続的に分画した.Mn処理2日後の交換態含量は,Si施用区の方が無施用区よりも有意に高かったが,Mn酸化物画分と残さ画分では,有意な差は認められなかった.一方,Mn処理4日後では,Si施用区のMn酸化物画分と残さ画分のMn含量が,Si無施用区よりも有意に高く,交換態画分では有意な差は認められなかった. (3)(2)の細胞壁画分粉末に,5%Macerase,1%Cellulysinを連続的に作用させ,溶解部をペクチン質画分,セルロース画分とした.Mn処理4日後のSi施用区では,.セルロース画分のSi, Mn含有率がSi無施用区よりも有意に高い結果が得られた. 以上の結果から,Si共存下で過剰のMnを処理した場合,初期段階では,Mnの細胞壁への結合性が増大するが,時間の経過とともに,Mnは,酸化物の形態で細胞壁のセルロース成分へ取り込まれ,これらを通じて,アポプラスト液相部分のMn濃度が低下すると考えられた.
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