2002 Fiscal Year Annual Research Report
酸化ストレスによるDNA酸化傷害を抑制する天然クマリン化合物の作用機序
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13660136
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
金子 孝夫 東京都老人総合研究所, 老化レドックス制御研究グループ, 主任研究員 (80100113)
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Keywords | クマリン化合物 / エスクリン / 抗発癌 / 化学発癌剤 / 膵癌 / N-ニトロソビス(2-オキソプロピル)アミン / 大腸癌 / 1,2-ジメチルヒドラジン |
Research Abstract |
前年度にハムスターに膵癌を発症させるN-ニトロソビス(2-オキソプロピル)アミン(BOP)およびラットに大腸癌を発生させる1,2-ジメチルヒドラジン(DMH)の単回投与による標的臓器の核DNA中に酸化傷害物[8-オキソ-2'-デオキシグアノシン(8-oxodG)]の増加が、エスクレチン水溶液の摂取によって有意に抑制されることを確認した。エスクレチンの配糖体であるエスクリンも同様に8-oxodGの上昇を抑制した。今年度は両癌の短期発癌実験を行い、前癌病変や腫瘍形成へのエスクリンの影響を検討した。膵発癌ではハムスターにイニシエーションとしてBOP(70mg/kg)、プロモーションとしてコリン欠餌下BOP(20mg/kg)投与を隔週で3回行い、24日後に膵を摘出した。エスクリン0.05%水溶液を飲水としてイニシエーション期(1群)またはプロモーション期(2群)に投与し,対照(3群)には水道水を与えた。肉眼的腫瘍を含む浸潤性膵管癌発生率は1群で有意に低かった。一匹の腫瘍数は1群と2群で対照より減少傾向が見られた。イニシエーション期のエスクリン投与による膵癌発生抑制の可能性が示唆された。一方、大腸発癌ではDMH(20mg/kg)を毎週1回計4回皮下投与し、11週後に大腸を摘出した。エスクリン0.05%水溶液を飲水として、1群にはDMH投与1週間前より5週間、2群にはDMH最終投与後11週間与え、3群には水道水を与えた。摘出直後に目視下腫瘍を、ホルマリン固定後大腸前癌病変Aberrant crypt foci (ACF)を観察した。ACF数は1、2群で3群より有意に低かった。また、肉眼的腫瘍発生率および一匹あたりの腫瘍数では、1群は3群に対して有意に低かったが、2群の低下は有意でなかった。エスクリンの経口投与はDMH投与によるラット大腸癌発生を抑制する可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)