2003 Fiscal Year Annual Research Report
混交林の樹種多様性に与える野ネズミの生息場所選択効果
Project/Area Number |
13660143
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
箕口 秀夫 新潟大学, 農学部, 助教授 (30291355)
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Keywords | 混交林 / 野ネズミ / 種子捕食 / 実生捕食 / 種子散布 / 林床植生 / 林冠構造 / 更新プロセス |
Research Abstract |
本研究は,持続的管理に不可分の生物多様性維持を考慮した森林管理を検討するため,混交林において樹種多様性が維持または変化するプロセスでの種子・実生捕食者/種子散布者の野ネズミの機能について,以下の作業仮説にそって検証を行った。 ●混交林の不均一な上層林冠構造によりモザイク状に下層植生が発達,分布する。 ●下層植生のモザイク構造に対応した野ネズミの密度,活動特性により樹木種子,実生の捕食,種子散布プロセスが変化し,樹種多様性が変化する。 最終年度である今年度は,昨年度から継続して林床植生が異なるブナ林(ササ型林床:1996年に一斉枯死,低木型林床)及び人工林で調査を実施し,以下の知見を得た。 1.林分構造,及び下層植生パッチ構造調査 壮齢人工林における施業履歴と下層植生の空間分布を評価した結果,施業,特に間伐実施の有無,間伐方法及び間伐実施後の時間軸に沿った下層植生構造の変化が認められた。 2.ネズミの種組成、密度調査 スギ人工林ではヒメネズミ,アカネズミが優占するが,両種の個体群動態は大きく異なり,ブナ林ではアカネズミ個体群の変動が非常に大きく不安定であったが,人工林では逆にヒメネズミで不安定であった。 3.野ネズミの利用場所選択調査 ヒメネズミ,アカネズミの利用場所選択は季節ごとの個体群構造によって大きく変化し,種子捕食,散布に関係する秋季では,個体群が増大するため両種とも特定の植生構造の利用する傾向は認められなかった。 4.種子捕食率調査 自動撮影カメラを利用した野ネズミの行動解析システムにより下層植生と野ネズミによる種子捕食率の関係を検討した。その結果,野ネズミによる種子捕食圧は下層植生が発達するパッチからの距離に依存して減少した。 これらの結果から下層植生を積極的に管理することにより,野ネズミの行動変化を介して,森林の更新プロセスを変化させることが可能であることが明らかになった。
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