2003 Fiscal Year Annual Research Report
樹林帯のもつ土砂移動現象抑制効果の定量的把握のための基礎的研究
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13660147
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
海堀 正博 広島大学, 総合科学部, 助教授 (30183776)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日浦 啓全 高知大学, 農学部, 教授 (30046495)
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Keywords | 樹林 / 土砂移動 / 土石流災害 / 侵食 / 遅延効果 |
Research Abstract |
15年度は、福岡県太宰府市周辺、熊本県水俣市周辺、大分県鶴見町周辺で局地的集中豪雨による土石流災害が発生した。それぞれについて現地調査を行い、広島・高知での同様の災害状況との比較をすることにより、土石流等の発生・流動・堆積機構や被害の発生機構について検討した。いずれの事例も、土砂移動は樹林に覆われた斜面から崩壊の形態で始まり、それが土石流に転じて下流の居住エリアに被害を発生させる近年の典型的な土石流災害の様相を呈していた。源頭部の崩壊地周辺については、水俣の場合、上部では10m程度の深さで崩壊が起きていること、下部ではごく表層近くまで岩盤が張り出しており、この両者の関係から樹林がその根系をもってしても崩壊挙動に対し抵抗体として働くことが困難であったことがわかった。一方で、大分県鶴見町の場合、土砂移動につながった雨量が40時間で600mm以上と平成11年の広島災害の2〜3倍程度の激しさであったが、斜面を覆う植生がスギ・ヒノキめ人工林、常緑・落葉の広葉樹の混交林を問わず非常に豊かな状態であったため、比較的小さな規模の被害ですんでいたことがわかった。流路等の状況についても、横方向には立木間の根系が及んでいないところから侵食が先行して起きていること、深さ方向にも根株の深さ相当より大きいところでの削剥が顕著であることなどが確かめられた。特に、30°以上の急傾斜地では根系の及ばない部位についての土砂移動がきわめて容易であることが確認された。 従来の知見とあわせると、樹林帯の土砂移動現象抑制効果は地形や地質構造に影響を受けるものの、樹林の生育状況とともにかなりの雨量になるまで土砂移動の開始時期を遅らせる形(遅延効果)で現れることがわかった。
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Research Products
(2 results)