Research Abstract |
1.神吉盆地 平成13年度に,京都府船井郡八木町の神吉盆地水田において,オールコアの機械ボーリングを行い深度46.35mの堆積物を採取した。本研究では,気候変動に伴う植生の変化を,過去の氷期・間氷期の1サイクル(過去15万年間)について解明する目的であったが,予想をこえて30万年間の堆積物を採取することができた。 平成14年度には,現在の温暖期の1つ前の周期の温暖期である最終間氷期から最終氷期初期(13万年前から9万年前)の堆積物について,花粉分析を行った。その結果は,以下のとおりである。 (1)結果 深度 優勢な花粉 A.22.3-21.5m:モミ属,ツガ属,スギ,ブナ,アカガシ亜属,サルスベリ属(後半) B.21.5-19.5m:モミ属,ツガ属,スギ,アカガシ亜属,サルスベリ属(前半) C.19.5-16.5m:コウヤマキ,スギ,ヒノキ科,コナラ亜属 (2)考察 上記の結果のAとBの層は,アカガシ亜属が比較的高い出現率で認められることから,最終間氷期に対応すると考えられる。Aでは,現在,冷涼な気候の冷温帯に分布の中心があるブナと,暖温帯性のアカガシ亜属や現在,日本列島南部の温暖な屋久島,南西諸島にしか自生しないサルスベリ属が共存している。Bでは,スギがもっとも優勢であるが,アカガシ亜属が,これまでで最も高い出現率を示す。Cでは,コウヤマキ,スギ,ヒノキ科の温帯性針葉樹とコナラ属の優勢な森林であった。BからCへの変化は,Isotope stage 5eから5dつまり,間氷期から氷期への気候変動に伴った森林の変化である。 2.蛇ヶ池 1の神吉では,2万年前から現在までの堆積物が欠けているため,同じ船井郡の日吉町蛇ヶ池において,採取した堆積物の花粉分析に年代値をあたえるため,2点の放射性炭素年代の測定を行った。 (1)年代測定結果 深度3.52m:9560±40 BP,深度3.84m:20120±120 BPであった。蛇ヶ池では,最終氷期最盛期から現在までの,植生変遷が明らかになっている。
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