Research Abstract |
前年度,オビスギ15品種の樹幹胸高部において,放射方向での組織・構造的な指標および力学的性質を調べ,品種間できわめて特徴的な違いが存在することを見いだした。そこで,今年度は,まだ解明がなされていないオビスギ15品種の樹幹高さ方向での材質変動を明らかにした。 まず,オビスギ15品種材と対照2品種材について,地上高2m部位と6m部位で,力学的性質および組織・構造的指標を,成熟材部と未成熟材部に分けて比較した。その結果,成熟材部では,縦圧縮ヤング率と縦圧縮強さが一品種(チリメンドサ材)を除き,他の品種材(オビスギ14品種材と対照2品種材)すべてにおいて6m部位での値のほうが大きかった。これには,容積密度数と仮道管2次壁中層(S_2層)ミクロフィブリル傾角の値が深く関与し,仮道管長さの影響は認められなかった。また,未成熟材部でも,縦圧縮ヤング率と縦圧縮強さの値は,多くの品種材で6m部位のほうがやや増大した。このことには,S_2層ミクロフイブリル傾角と仮道管長さの影響が認められたが,容積密度数の関与はなかった。なお,仕事量については,成熟材部と未成熟材部ともに,高さ方向での変動に明確な傾向は認められなかった。 上述のように,オビスギ15品種で高さ方向での部位の違いによる変動が認められたので,オビスギ15品種のうちタノアカ材を用いて,樹幹の根元から梢端に至るまでの材質変動を詳細に調べた。丸太材の動的縦ヤング率の値は,樹幹上方に向かうと増大し,その最大値が樹高の22%から67%付近に認められ,さらに上方では減少を示した。このような動的縦ヤング率の挙動には,樹幹の根元から最大値が認められる高さまでは容積密度数,S_2層ミクロフィブリル傾角,そして仮道管長さが影響を与え,それより上方では容積密度数が主体的に関与していることが推察された。
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