2001 Fiscal Year Annual Research Report
干潟の生産力とその社会的意義の評価―東京湾を出発点にして―
Project/Area Number |
13660180
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Research Institution | 東京水産大学 |
Principal Investigator |
馬場 治 東京水産大学, 資源管理学科, 助教授 (40189725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
除本 理史 東京経済大学, 経済学部, 講師 (60317906)
川邊 みどり 筑波大学, 社会工学系, 講師 (80312817)
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Keywords | 干潟 / 東京湾 / 環境指標 / アサリ / グリーンツーリズム / 放流 / 千葉県 / アメニティー |
Research Abstract |
本年は主として東京内湾のアサリ漁業生産の実態把握と生産構造の解明を中心に行った。アサリの国内生産が大きな落ち込みを示すここ30年間にあって、千葉県の生産は比較的安定的に推移し、現在では愛知県に次いで国内2位の位置にある。千葉県内でも生産量をほぼ正確に把握できる数少ない地域として木更津地区があり、当漁協の生産統計、業務報告書及び関連資料、現地での聞き取り調査を実施し、当地区のアサリ漁業生産構造の解明を通じて東京内湾全体の概要を明らかにした。 千葉県内では湾南部(木更津、中里、久津間、金田、牛込、富津、江川)の漁協地区の生産が県内のアサリ生産の大部分を占めている。これら7漁協では、漁協による稚貝放流と漁獲物の販売をその内容とする養貝(ようかい)事業が実施されており、この事業の存在が千葉県内生産の安定性に大きく貢献していることが研究により明かとなった。年度により大量弊死等の現象が見られると稚貝放流量を増やし、結果的に生産量を確保するという対応がとられている。これらの放流費用には養貝事業を通じて得る事業収益があてられるが、その費用は大きく、行政の財政的支援を得て実現している実態が明かとなった。最近では、地浜(地元の前浜)にあった稚貝の確保や放流技術を習得し、稚貝の生残率が向上した結果、養貝場の稚貝放流量と漁獲量の関係は大幅に改善され、稚貝放流の存在意義はさらに高まっていることが明らかになった。 以上のように、木更津地区のアサリ生産構造を明らかにした上で、当地区を初めとして千葉県内で比較的に安定的なアサリ漁業生産が維持されている背景として、放流稚貝購入財源の確保手段としての養貝事業の定着と都市部ゆえの各種開発行為に伴う補償金収入という財源の存在も否定できない。
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