2001 Fiscal Year Annual Research Report
耳石微量元素および安定同位体分析に基づくウナギの回遊生態に関する研究
Project/Area Number |
13660185
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
望岡 典隆 九州大学, 大学院・農学研究院, 助手 (40212261)
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Keywords | ウナギ / 耳石 / 微量元素分析 / Sr / Ca |
Research Abstract |
天然ウナギやシラス種苗の漁獲量は年々減少し、今やウナギは絶滅に向かっているのではないかと危倶される状況にある。しかし、陸水域に加入後、産卵回遊に向かうまでの生態に関する知見は、ウナギ資源の管理に向けて不可欠であるにも拘わらずほとんど無い。本研究は、微量元素分析を含む耳石微細構造解析を行って生活履歴を捉え、これに生理・生態情報を組み入れて回遊生態の解明を行ない、夫然ウナギ資源の管理と保全および培養策についての提言を行うことを目的とする。 長崎県大村湾(54個体:354〜826mmTL)、熊本県球磨川河口域(52個体:379〜890mmTL)および東シナ海(7個体:517〜878mmTL)で採捕された計113個体を供試魚とした。耳石微量元素分析(Sr/Ca)より、シラスウナギ期以降の回遊履歴は次の3タイプに分けられた。タイプA:河川で数ヶ月から数年生活した後、河を降り、汽水域で生活(大村湾14%,球磨川河口15%,東シナ海14%),タイプB:汽水域で生活(大村湾74%,球磨川河口62%,東シナ海43%),主に湾内あるいは汽水域で生活し、この間河川に短期間遡上(大村湾12%,球磨川河口23%,東シナ海43%).耳石微量元素分析の結果では、淡水域での生活履歴をもたないウナギの存在が示唆されたが、光学顕微鏡下で耳石輪紋を観察したところ、河川遡上時に形成される淡水マークが確認され、用いた全てのウナギはシラスウナギ期に河川水の影響下にある水域にいたと考えられた。各型間で成長や成熟に差異は認められなかった。従来、ウナギは秋から冬に成熟し、冬には生殖線に退縮傾向が現れると報告されていたが、本研究では11〜2月に生殖線体指数は高くなり、2月の個体でも退縮傾向は認められなかった。東シナ海で採集された銀化ウナギのGSIや成熟段階は、湾や河口付近で冬季に採集された個体と同様であった。
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