2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13660199
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 勝子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (30092381)
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Keywords | D-アラニン / 遊離アミノ酸 / クルマエビ / アルギニン / グリシン / グルタミン |
Research Abstract |
水生動物における遊離アミノ酸やD型アミノ酸に関するこれまでの研究は成体における一時期についての分析にとどまっている。D-アラニンや他の遊離アミノ酸蓄積機構解明の一環として今年度は、甲殻類十脚目のエビ・カニ類は脱皮を繰り返し成長することに着目し、成長の過程でD-アラニンを含む遊離アミノ酸量がどのように変動するかを調べることとした。 常時海水を循環している屋外水槽中で、人工飼料を与えて飼育した15〜20gのクルマエビを脱皮後経時的に採取し、個体別に筋肉から調製した80%エタノールエキス中のDおよびL-アラニン(HPLC法)および全遊離アミノ酸(アミノ酸自動分析計)を測定し、以下の結果を得た。 1.いずれの試料でもアルギニン(450〜620μmol、筋肉1g中、以下同様)とグリシン(90〜195μmol)が圧倒的に多く、無脊椎動物に多いといわれるタウリンとアラニンは概して少なかった。 2.全アミノ酸に占めるアルギニンとグリシンの合計は75〜88%(mol/mol×100)にも達し、この割合は脱皮直後に高い傾向が認められた。 3.アラニン含量は13〜20μmolで、脱皮後の時間経過に伴う明瞭な変化は認められなかった。 4.D-アラニンの全アラニンに対する割合は42〜47%でアラニン含量と同様に脱皮による変動はなかった。 5.遊離アミノ酸の合計は740〜920μmolとなり、雌雄いずれも脱皮直前に増加し、グルタミン、プロリン、アルギニンも同様の変動を示したが、グリシンは脱皮直後に増加した。 以上の結果から、クルマエビの生理的現象の一つである脱皮前後における遊離アミノ酸を調べたところ、DおよびL-アラニン量には明瞭な変動は認められなかったが、遊離アミノ酸の合計、グリシン、アルギニン、プロリン、グルタミン量が脱皮直前に増加し、グリシンは脱皮直後に増加するなど遊離アミノ酸は外骨格形成においても影響を受けることがわかった。
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