2002 Fiscal Year Annual Research Report
コーヒーのフードシステムに関する理論的実証的研究-生産農民の貧困緩和に貢献するための原産国と消費国の新たな結合の可能性-
Project/Area Number |
13660219
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
新山 陽子 京都大学, 農学研究科, 教授 (10172610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻村 英之 京都大学, 農学研究科, 助教授 (50303251)
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Keywords | フードシステム / 南北問題 / コーヒー / 先物市場 / フェアトレード / タンザニア / ブラジル / 経済開発 |
Research Abstract |
コーヒー「大国」ブラジルにおける生産・流通システムのさらなる近代化・効率化、コーヒー「新興国」ベトナムにおける低品質豆の大増産を主因とし、コーヒーの国際市場は供給過多の状況にあり、さらにその低価格での安定がゆえに投機家が興味を失い、ニューヨーク・コーヒー取引所で決まるアラビカ種コーヒー豆の先物価格は、「史上最安値」の水準にある。このニューヨーク先物価格は、世界全体のアラビカ・コーヒーの取引において、基準価格として利用されている。それゆえタンザニアを初めとするコーヒー「小国」においては、生産・流通システムの非効率性、販売・生産者サイド(小農民や協同組合等)と買付・輸出業者サイド(ほとんどが多国籍企業)との取引力、情報量のあからさまな格差、等と相まって、生産者価格の「史上最安値」が実現してしまっている。世界の2500万人のコーヒー生産者が貧困にあえいでいる。 逆に消費国・日本のコーヒー産業にとっては、安価な原料豆を調達できる恵まれた環境の下にあるが、長引く不況、外資系コーヒーチェーン店の台頭(喫茶店に対するニーズの変化)、輸入商社→生豆問屋→焙煎業者→業務需要・小売店といった事業段階間の垣根喪失、等が相まって、競争が激化している。その結果、「低価格追求」コーヒーと「高品質追求」コーヒーの市場の二極分化が進んでいる。後者に特化する業者の場合、生産者価格の低迷→生産意欲の減退→品質管理の緩慢化→高品質豆確保の困難化は、死活問題であると言える。 以上の問題点を解決し得る望ましい「原産国-消費国結合のあり方」として、まずは「南北問題運動」の最大の成果である国際コーヒー協定を挙げることができるが、アメリカの脱退を主因として、1989年以降、機能が停止している。代替策として、同協定を管理する国際コーヒー機関を中心に、生産者支援基金構想が議論されているが、実現に至っていない。現在、実践されている唯一の望ましい「結合のあり方」として、フェアトレード(最低輸出価格の設定と生産者への利益還元を保証する貿易運動)を挙げることができるが、普及が進んでない(日本におけるシェアは1%に満たない)。
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[Publications] 辻村 英之, 山田 早苗: "コーヒー生産者の貧困緩和のための国際協調制度-国際商品協定・生産者支援基金・フェアトレード-"農業と経済. 69巻・5号(発売予定). (2003)
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[Publications] 辻村 英之: "価格の決定権を生産者の手に-タンザニア産コーヒーの現場から-"月刊 オルタ. 315号. 18-20 (2002)
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[Publications] 辻村 英之: "日本におけるタンザニア産コーヒー豆の輸入と消費の構造分析-価格形成制度と南北問題-"金沢大学経済学部論集. 22巻・2号. 237-261 (2002)
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[Publications] 辻村 英之: "タンザニアにおけるコーヒー豆貿易の現状と課題-日本への輸出構造と価格形成制度-"フードシステム研究. 8巻・2号. 57-69 (2001)