2002 Fiscal Year Annual Research Report
筋肉・脂肪細胞系譜決定遺伝子の衛星細胞ゲノム導入によるウシ筋管内脂肪組織の創製
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13660291
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
丸山 公明 明治大学, 農学部, 教授 (80328971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾野 喜孝 佐賀大学, 農学部, 助教授 (00112318)
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Keywords | 衛星細胞 / 成体幹細胞 / 筋肉細胞 / 脂肪細胞 / ウシ / PPARγ / 多能性 / 細胞分化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、成獣から骨格筋衛星細胞を分離し、その細胞の多能性を証明することである。その目的のために、細胞分離、精製、培養方法を確立した。衛星細胞はウシの大腿二頭筋から分離し、実験に供した。衛星細胞を繊維芽細胞から分離するために、培養ディシュ・プラスティックヘの吸着度の違いを利用し、衛星細だけを99%以上の純度で精製した。これらの細胞は未分化単核細胞のステージでデズミンタンパク質を発現しており、筋肉細胞への系譜は決定されていると判定された。培養培地はDMEM/F-12を基盤とし、10%Fetal Bovine Serumで十分な増殖を維持できた。低血清濃度、または、コンフルーエンス状態で分化が誘導され、細胞融合を起こして、多核細胞である筋管を形成し、筋肉分化マーカーであるミオシンタンパク質を発現した。以上の知見から、ウシ骨格筋衛星細胞は従来の考えどおり、筋肉損傷での予備細胞であることが明らかである。 本研究では仮説を「衛星細胞の系譜は筋肉系譜に固定されていない」と設定し実験を行った。この目的のためにCMVプロモター・エンハンサーによって駆動され、EGFPとPPARγを発現するDNAベクターを構築し、単核細胞ステージの骨格筋衛星細胞ゲノムにリポフェクションにて導入した。PPARγは系譜未決定の細胞を脂細胞系に誘導することが知られている。この実験システムでは、EGFP発現による蛍光が観察された場合、PPARγが導入されたと仮定することができる。衛星細胞に緑色蛍光が確認され、PPARγが導入された場合、細胞は脂肪細胞の分化マーカーである脂肪滴を蓄積した。脂肪滴はオイルレッドオーにて、鮮やかな赤色に染色され、筋管の形成は見られなかった。一方、PPARγが導入されない場合では筋管形成が認められ、ミオシンの発現がMF20モノクローン抗体で探知されている。PPARγの導入が、筋肉細胞分化を開始した後に起こった場合、多核細胞である筋管にて、脂肪の蓄積とミオシン筋肉タンパク質の蓄積が同時に起こっている。以上の結果から骨格筋衛星細胞の系譜は固定しておらず、多分化能を持っていることが示唆される。現在、PPARγともう一つの脂肪細胞系譜決定・分化に貢献するC/EBPαとの相互作用を解析し、細胞の多能性の概念とメカニズムを再検討している。
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Research Products
(1 results)