2002 Fiscal Year Annual Research Report
黒毛和種の複合免疫不全症(CID)の病態解明ならびに遺伝子診断法の開発
Project/Area Number |
13660326
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
岡田 洋之 酪農学園大学, 獣医学部, 助教授 (50166419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小岩 政照 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (90094820)
遠藤 大二 酪農学園大学, 獣医学部, 助教授 (40168828)
桐沢 力雄 酪農学園大学, 獣医学部, 助教授 (70153252)
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Keywords | 免疫不全症候群 / 黒毛和種 / 遺伝性疾患 / V(D)J再構成 / IL-2受容体 |
Research Abstract |
原発性免疫不全症は免疫機構の機能不全あるいは器質的障害に伴い難治性感染症に反復罹患する症候群で、遺伝関係が証明される場合が多い。またウシでの報告は現在までに受精卵移植によるアンガス牛1例以外にない。2000年3月から2003年7月にかけて北海道内において免疫不全が疑われる黒毛和種の子牛7例に遭遇した。症例は生後1〜4ヶ月の黒毛和種の雄6例、雌1例で、臨床的に出生時より虚弱で、下痢や肺炎を繰り返していた。血清中の各免疫グロブリンサブクラスはいずれも低値であった。病理学的に全身のリンパ器官、とくに胸腺ならびに小腸パイエル板、骨髄は高度に萎縮していており、深在性真菌症(ムコール症)に罹患していた。PBMCの表面抗原解析ではB細胞の割合が約5%と極度に減少しており、PBMCはPHA刺激に対しほとんど反応しなかったが、IL-2添加により反応した。脾臓からDNAおよびmRNAを抽出して免疫グロブリンL鎖Vλ遺伝子領域のV(D)J再構成の遺伝子発現と、PT-PCR法によりRAG-1ならびにRAG-2のmRNAの発現を検索したところ、両遺伝子は全例で発現していた。上記の成績より液性ならびに細胞性免疫はほとんど器質的に機能していない状態であることが証明されたことから、複合免疫不全症候群と診断した。しかしV(D)J再構成の遺伝子発現からヒトやウマのSCIDと、またIL-2受容体γ鎖欠損によるX-SCIDとはその病理発生をことにする新たな免疫不全症候群の範疇に分類されると思われる。ウシにおける免疫不全症についての報告は少なく、これまで分子生物学的解析はされていないことから、今後さらなる研究が必要である。
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