前脳基底部コリン作動性血管拡張系の活性化が脳虚血時の血流と神経細胞死に及ぼす効果

2002 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13670078
• Research Institution: Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology
• Principal Investigator: 堀田 晴美 東京都老人総合研究所, 運動・自律機能相関研究グループ, 研究員(主任) (70199511)
• Keywords: 前脳基底部 / 中隔野 / 海馬 / ラット / 脳局所血流 / 遅発性神経細胞死 / 一過性虚血 / マイネルト核

Research Abstract

近年、前脳基底部のマイネルト核や中隔野に起始し大脳皮質や海馬に投射するコリン作動性ニューロンを活性化すると、大脳皮質や海馬で代謝性の血管拡張とは無関係の血流増加反応が起こることが示された。そこで本研究は前脳基底部の電気刺激による大脳皮質血流の増加が、一過性虚血による大脳皮質や海馬ニューロンの遅発性神経細胞死を改善するかどうかを明らかにすることを目的とした。
昨年度はマイネルト核刺激が大脳皮質における血流低下を防ぎ、虚血によって誘発される大脳皮質ニューロンの遅発性神経細胞死を防ぐことを報告した。そこで本年度は、中隔野刺激で海馬での遅発性ニューロン死が抑えられるかどうかを明らかにするため、海馬で軽度な虚血を起こすモデル作成を試みた。
虚血中の海馬血流の反応をレーザードップラー血流計を用いて測定した。虚血後の海馬の神経細胞死を組織学的に調べた。大脳皮質のみに軽度な遅発性ニューロン死をおこした一側頸動脈の5秒毎の断続的結紮に、両側椎骨動脈永久結紮を加えてみたところ、一側総頸動脈結紮中、海馬血流は結紮前のコントロール血流の約70%に低下し、60分間にわたる一側総頸動脈断続的結紮の5日後に海馬CA1において約10%のニューロンに遅発性ニューロン死が認められた。中隔野に刺激電極を刺入して、結紮の5分前に開始し結紮終了と同時に終える、トータル65分間の電気的頻回刺激(0.5ms,200μA,50Hz,1s on/1s off)を加えた。中隔野刺激による海馬血流の増加は、結紮による海馬血流の低下を防いだ。
以上、中隔野刺激による海馬血流増加反応は、マイネルト核刺激一大脳皮質系の場合と同様、虚血時における血流低下を防ぐことが明らかとなった。この血流改善効果が、虚血によって誘発される海馬ニューロンの遅発性神経細胞死の防御につながるかどうか、来年度検討する予定である。

Research Products

• [Publications] Hotta, H., Uchida, S., Kagitani, F.: "Effects of stimulating the nucleus basalis of Meynert on blood flow and delayed neuronal death following transient isehemia in the rat cerebral cortex"Japanese Journal of Physiology. 52. 383-393 (2002)
• [Publications] Nakajima K, Uchida S, Suzuki A, Hotta H., Aikawa Y.: "The effect of walking on regional blood flow and acetylcholine in the hippocampus in conscious rats"Autonomic Neuroscience. 103. 83-92 (2003)