2002 Fiscal Year Annual Research Report
膵腫瘍の病理組織診断の再検討:免疫組織化学、分子生物学的手法によるフィードバック
Project/Area Number |
13670159
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
清水 道生 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (60226256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 智雄 北海道大学, 医学部, 講師 (20301880)
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Keywords | endocrine tumor / p53 / MIB-1 / CEA / CA19-9 / VEGF / HE染色標本 |
Research Abstract |
膵臓は膵管(duct),腺房(acinus),ラ氏島(islet)の大きく3つの構成成分からなり,pancreatic endocrine tumorはそのうちのラ氏島由来の腫瘍と考えられている。通常のHE染色標本による細胞異型などからのみでは,その良・悪性の鑑別は困難で,神経や脈管への侵襲像や転移をもって悪性とせざるを得ないのが現状である。今回はその膵内分泌腫瘍の切除例を対象として,一次抗体としてp53,MIB-1,chromogranin A, CEA, CAl9-9,VEGFを使用し,自動免疫染色装置(ペンタナNXシステム)にて免疫組織染色を行ない検討した。 p53は大部分の症例で陰性であり,陽性を示した症例も組織所見のみからは必ずしも悪性と言い切れない症例であった。glucagonomaで陽性を認めらたが,分泌ホルモンとの関係についてもさらに検討が必要と考えられる。MIB-1に関しても良性・悪性の鑑別に有用とは言い切れなかった。Chromogranin Aは全例において陽性所見を示したが,悪性例の一部では染色性が低下している部分もみられた。CEAやCE19-9が部分的に陽性になる症例が存在したが,正常のductのentrapなのか,腫瘍の一部がductal differentiationしたものかはさらなる検討が必要と思われた。HE染色標本との比較ではductal differentiationが示唆された。悪性例との相関は得られなかったが,duct-endocrine tumorとの異同についても別の角度からの検討が必要と考えられた。VEGFはラ氏島のB細胞に陽性とされているが,今回の検討では陽性率は低く,良悪性の鑑別に有用となる所見は得られなかった。以上,内分泌腫瘍に関してはp53が一部の悪性内分泌腫瘍で陽性を示したが,症例数が限られており,症例の集積が必要と思われる。また,腫瘍内でのductへの分化を示す所見は興味を引く病理所見であり,さらに検討を進める予定である。
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