Research Abstract |
骨髄異形成症候群(MDS)における腫瘍抑制遺伝子不活化と白血病化との関係を明らかにするため,細胞周期を調節するcyclin-dependent kinase抑制系に関与する遺伝子p16,p14,p15,p18についてepigeneticな変化であるDNAメチル化について検討を加えた.使用症例はMDS 29例(RA 16,RARS 3,RAEB 10),急性骨髄性白血病(AML)23例(MDS-derived AML 10,de novo AML 13),コントロール6例の計58例の骨髄標本を用いた.抗p16抗体、抗p14抗体、抗p18抗体を用いた免疫染色では顕微鏡にdigital cameraを設置して,それぞれの画像を多数取り込み検討した.メチル化状態の検索ではDNAを抽出し,sodium bisulfite処理後,p16,p15,p14のpromoter領域におけるメチル化に対するpromerと非メチル化に対するprimerを用いてmethylation specific PCR(MSP)を施行した.抗p16抗体の陽性率はcontrol 1.87%,RA 2.63%,RARS 2.09%,RAEB 8.68%,MDS-derived AML 18.03%,de novo AML 30.64%であった.同様に抗p14抗体ではcontrol 0.2%,RA 0.21%,RARS 0.29%,RAEB 0.45%,MDS-derived AML 0.82%,de novo AML 0.72%、抗p18抗体でcontrol 0.86%,RA 0.83%, RARS 1.09%,RAEB 2.68%,MDS-derived AML 29.86%,de novo AML 50.02%であった。MSPではまずp16についてunmethylated(U)症例はRA2例,MDS-derived AML2例,de novo AML1例,control 2例で,methylated(M)症例はRAEB1例のみであった.p14ではM症例がRA3例、RARS1例、RAEB5例、MDS-derived AML4例、de novo AML3例であり、p15ではM症例がRA2例、RAEB5例のみであった。他の症例は全てnon-informativeな結果(増殖産物が全く見られないなど)であった.今回の結果からp16よりもp14において多くの症例でhypermethylationが認められ、そのために蛋白の発現レベルが免疫染色ではほとんど検出できない症例がMDSを中心に認められた。p15とp18については免疫染色とMSPを同時に観察できなかったため、関連性については推察しかできなかった。MDS症例においてはepigeneticな変化が多く認められており、腫瘍抑制遺伝子に関してメチル化がMDSの病態の発症およびその進展になんらかの関与をしていると考えられた。
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