2003 Fiscal Year Annual Research Report
肺癌の間質浸潤過程における基底膜破壊の分子機構の解析
Project/Area Number |
13670166
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
明石 巧 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (60242202)
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Keywords | 肺癌 / 基底膜 / マトリゲル / 癌間質相互作用 / サイトカイン |
Research Abstract |
肺腺癌の間質浸潤過程において、基底膜は癌細胞の浸潤性発育を抑制するとともに、癌細胞から分泌される間質増殖因子の拡散を抑制する機能を持ち、基底膜の消失に伴い、癌細胞は浸潤性に発育するとともに、間質増殖因子も拡散し間質細胞の増生をきたす可能性を考えている。 これまでの研究で、肺癌細胞から分泌されるbFGFに対して基底膜物質が選択的な拡散障壁となっていることを明らかにした。そこで平成15年度においては基底膜物質の中で拡散障壁となる物質を同定した。bFGFは基底膜物質マトリゲル、ヘパラン硫酸に対し結合性を持つことがELISA法によって確認された。硫酸プロタミンの存在下では、マトリゲル、ヘパラン硫酸に対する結合性はいずれも著しく減少した。肺癌細胞をマトリゲルで被覆して培養すると、分泌されたbFGFはマトリゲルに捕捉・蓄積され培養液中にはほとんど認められず、マトリゲルに硫酸プロタミンを加えると、培養液中に高溝度のbFGFが認められるようになった。この結果から肺癌細胞から分泌されるヘパリン結合性間質増殖因子は基底膜物質中のヘパラン硫酸によって拡散が抑制されるとともに、基底膜中に捕捉・蓄積されており、基底膜の破壊によって放出され、間質増生を引き起こす可能性が示唆された。 一方、基底膜が癌細胞の浸潤性発育を抑制する機序として、基底膜の存在下で癌細胞における遺伝子の発現パターンに変化が起きる可能性を想定し、前年度までにcDNAアレイを用いて基底膜物質の存在下で発現の変わる遺伝子をスクリーニングし、約50個の遺伝子を見出した。このうち、細胞骨格関連蛋白EF1a1,EF1a2,EF1d遺伝子,蛋白分解酵素カテプシンDの発現変化をノザン法によって検索したが、cDNAアレイに一致した結果は得られなかった。今後は他の遺伝子についても解析すると同時に、cDNAアレイの技術的問題点の検討も必要となった。
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Research Products
(1 results)