2002 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯熱マラリア原虫の抗酸化機構を標的とする抗マラリア薬開発の基礎的研究:既存抗マラリア薬作用機序のおける原虫ペルオキシレドキシンの関連の解析
Project/Area Number |
13670260
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Research Institution | Research Institute, International Medical Center of Japan |
Principal Investigator |
河津 信一郎 国立国際医療センター, 研究所, 室長 (60312295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川合 覚 獨協医科大学, 医学部, 講師 (70275733)
野崎 智義 国立感染症研究所, 寄生動物部, 室長 (60198588)
狩野 繁之 国立国際医療センター, 研究所, 部長 (60233912)
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Keywords | アンチオキシダント / ペルオキシレドキシン / マラリア / Plasmodium |
Research Abstract |
本研究では、熱帯熱マラリア原虫の抗酸化機構を標的として、現行の抗マラリア薬に相加・相乗効果を示す新規治療補助薬を開発することを目的としている。本年度は、原虫ヘモグロビン代謝におけるペルオキシレドキシン(Prx)の役割を、遺伝子発現パターンの解析、タンパク過剰発現原虫株の解析、ならびに、組換え体タンパクの生化学的解析から考察した。まず、原虫Prxの遺伝子発現パターンをリアルタイム定量RT-PCR法によって解析したところ、1-Cys型Prx遺伝子の発現が、原虫のヘモグロビン代謝の時期と一致して、トロホゾイト期に特徴的な亢進を示すことが示された。これは2-Cys型Prx遺伝子が赤血球内期全体にわたりほぼ構成的に発現することと対照的である。また、1-Cys型Prx過剰発現原虫では、クロロキン(毒性ヘムの負荷)に対する感受性が、親株のそれに比して、有意に低下した。さらに、1-Cys型Prxの生理機能を、原虫細胞質内での還元型グルタチオン(GSH)によるヘム分解反応に関連して検証したところ、同組換え体タンパクは(1)GSHのヘム分解(鉄イオンの産生)を低下させた。また、(2)鉄イオンに起因して派生する過酸化物からのDNA・酵素の変性・失活を軽減させたさらに、(3)膜分画(赤血球ゴースト)への遊離ヘムの移行を阻害した。以上の成績から、1-Cys型Prxは、原虫細胞質においてGSHによるヘムの分解を抑制的に調節し、またそこから派生する過酸化物から生体分子を保護し、さらに膜への遊離ヘムの移行を阻害することにより、複数の作用点で、ヘモグロビン代謝に起因して原虫が被る酸化ストレスを緩和することが推測された。これらのことから、マラリア原虫の1-Cys型P1xが、クロロキンと相加・相乗勲果を示す新規治療補助薬の標的となる可能性が示唆された。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Hatabu, T. et al.: "The expression system of biologically active canine interleukin-8 in Leishmania promastigotes"Parasitology International. 51. 63-71 (2002)
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[Publications] Mizuno, Y. et al.: "Plasmodium falciparum : effect of jasplakinolide on the growth, invasion, and actin cytoskeleton"Parasitology Research. 88. 844-848 (2002)
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[Publications] Kabututu, Z. et al.: "Prostaglandin production from arachidonic acid andevidence for a 9,11-endoperoxide prostaglandin H(2) reductase in Leishmania"International Journal for. Parasitology. 33. 221-228 (2003)
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[Publications] Mizuno, Y et al.: "In-vitro uptake of vitamin A by Plasmodium falciparum"Annals of Tropical Medicine & Parasitology. 97(印刷中). (2003)