2002 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザBウイルス粒子形成過程におけるBM2蛋白の機能と宿主細胞因子の役割
Project/Area Number |
13670310
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
小田切 孝人 国立感染症研究所, ウイルス第3部, 室長 (80177237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 正樹 国立感染症研究所, ウイルス第3部, 研究員 (30333363)
渡辺 真治 国立感染症研究所, ウイルス第3部, 研究員 (30332365)
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Keywords | インフルエンザBウイルス / 膜蛋白 / トランスゴルジネットワーク / リバースジェネティクス / BM2蛋白 |
Research Abstract |
本研究は、B型インフルエンザウイルスだけに存在するユニークな蛋白BM2の性状について解析を行い、B型ウイルス粒子形成にとってBM2蛋白の果たす役割を解明することを最終目的としている。平成13年度で解明した研究成果をふまえて、平成14年度には以下の点を明らかにした。 1 BM2蛋白は合成後速やかにゴルジ装置に結合して、トランスゴルジ輸送系で細胞膜まで運ばれることから(H13年度成果)、BM2はB型ウイルスの第4番目の膜蛋白である可能性が示唆された。 2 これを証明するために、ウイルス感染細胞の膜画分を精製したところ、BM2は膜蛋白である赤血球凝集素HAとともに膜画分に検出された。 3 BM2蛋白のアミノ酸配列の解析から、N末端の23アミノ酸領域は膜貫通ドメインであることが推定された。そこで、BM2が細胞膜に突き刺さっているのか否かを証明するために、種々の生化学的方法で膜を処理したところ、BM2は膜貫通型の膜蛋白であることが証明された。また、このN末端を欠損させた変異体BM2は膜との結合能を欠いていたことからも、上記の結論が裏付けられた。 4 精製ウイルス粒子をそれぞれ界面活性剤存在下または非存在下でトリプシンまたはキモトリプシンで処理し、BM2が粒子表面に突き出ているか否かを検討した。その結果、BM2はN末端をウイルスエンベロープに突き刺してはいるものの、大部分は粒子内に存在することが確認された。 5 B/山形/73株遺伝子を組み込んだリバースジェネティクス(RG)系を確立した。この系を用いて、BM2欠損またはBM2の一部を欠落させた遺伝子改変ウイルスの回収を試みたが、BM2分子内に欠損があると感染性粒子が産生されなかった。このことから、BM2はB型ウイルスの増殖にとって必須の蛋白であることが示唆された。 以上の研究成果はJ. Virol (2003)に発表される予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 小田切 孝人: "インフルエンザウイルス株サーベイランスの現状と問題点"インフルエンザ. 3. 45-52 (2002)
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[Publications] 小田切 孝人: "インフルエンザウイルス対策-サーベイランス状況も踏まえて"化学療法の領域. 18. 1735-1740 (2002)
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[Publications] 小田切 孝人: "インフルエンザウイルスの世界の動向と今冬の日本の予測"The Medical Test Journal. 836. 5 (2002)
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[Publications] 小田切 孝人: "感染症サーベイランスからわかること"臨床と研究. 79. 2140-2144 (2002)