2002 Fiscal Year Annual Research Report
化学物質によるメッセンジャーRNA前駆体スプライシング障害の評価システムの開発
Project/Area Number |
13670334
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Research Institution | Kobe University Graduate School of medicine |
Principal Investigator |
西尾 久英 神戸大学, 医学系研究科, 教授 (80189258)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 雅文 神戸大学, 医学部, 教授 (10157266)
綾木 仁 神戸大学, 医学系研究科, 助教授 (80222701)
李 明鎮 神戸大学, 医学系研究科, 講師 (20273766)
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Keywords | メッセンジャーRNA前駆体 / スプライシング / スプライシング促進配列 / 抗SMN抗体 / SMN蛋白 / 脊髄性筋萎縮症 / 可変スプライシング |
Research Abstract |
スプライシング機構を一次的に攻撃して遺伝子発現を撹乱する環境化学物質の存在が予想されてきたが、これまで報告はない。研究者らは、スプライシング異常のために発症した遺伝疾態の研究の過程で、人工合成したmRNA前駆体を用いるスプライシング・アッセイ系を考案した。 平成14年度は、人工遺伝子から得たmRNA前駆体を用いて、HeLa細胞核抽出液中でスプライシング反応実験を行った。その結果、ヒト・ジストロフィン遺伝子のエクソン19、26に由来するスプライシング促進配列(SES)を有するmRNA前駆体において、スプライシング反応が効率良く進んだことが確認された。 次に、HeLa細胞核抽出液中に抗SMN抗体(核内に存在するSMN蛋白に対する抗体)を添加したのち、同様の実験を行ったところ、ヒト・ジストロフィン遺伝子のエクソン19に由来するSESを有するmRNA前駆体においては、スプライシング反応が阻害された。しかし、ヒト・ジストロフィン遺伝子のエクソン19に由来するSESを有するmRNA前駆体においては、スプライシング反応は阻害されなかった。 これらの所見は、同じ外来性の物質であっても、SESの塩基配列によっては、スプライシングが阻害されたり、阻害されなかったりすることを示している。現時点では、スプライシング機構を攻撃して遺伝子発現を撹乱する環境化学物質を網羅的にスクリーニングすることは困難であろう。ある環境化学物質がスプライシング機構を攻撃するか否かの判定は、暴露時に誘導されるmRNA分子種の同定を必要とするものと思われる。本研究の成果は、スプライシング機構を攻撃する環境化学物質のスクリーニングには直結しなかったが、脊髄性筋萎縮症の病態や臓器特異的な可変スプライシングの機序を解明する糸口を提供するものとなった。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Ito.T, Takeshima Y, Nakamura H, Matsuo M.: "One of three examined purine-rich sequences selected from dystrophin exons exhibits splicing enhancer activity"Acta Myologic. 20巻. 151-153 (2001)
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[Publications] Ito.T, Takeshima Y, Sakamoto H, Nakamura H, Matsuo M.: "Purine-rich exon sequences are not necessarily splicing enhancer sepquence in the dystrophin gene"Kobe. J. Med. Sci.. 47巻. 193-2002 (2001)
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[Publications] 竹島泰弘, 松尾雅文: "アンチセンス・オリオヌクレオチドを用いたエクソンスキッピング誘導による遺伝子治療"別冊実験医学 ザ・プロトコールシリーズ 遺伝子の機能障害実験 簡単で確実な遺伝子機能解析からの遺伝子治療への応用まで. 175-182 (2001)