2002 Fiscal Year Annual Research Report
環境中吸入性粒子が肺の線維化をひきおこす肺内沈着閾値量の検討
Project/Area Number |
13670401
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health |
Principal Investigator |
大藪 貴子 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助手 (20320369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大和 浩 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助教授 (90248592)
森本 泰夫 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (30258628)
田中 勇武 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (00038035)
大神 明 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助手 (40301692)
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Keywords | 肺内滞留性 / 吸入性粒子 / 線維化 / 気管内注入法 / 注入曝露法 |
Research Abstract |
前年度は、線維化をひきおこす肺内沈着量の"閾値"を明らかにするために、繊維状チタン酸カリウムを投与量を変えてラット気管内に注入し、粒子の肺からの排泄速度、病理組織変化を検討した。その結果、肺重量の増加、肺内滞留性の増加、病理組織の変化は、すべて注入量依存的であり、肺内滞留粒子量が病変の引き金になることを裏付ける結果が得られた。しかし、今回の気管内注入試験とこれまでの吸入曝露試験では、肺内滞留粒子量と生物学的半減期の相関が異なっており、閾値を明らかにすることはできず、閾値を明らかにするには吸入曝露試験を行うことが必要と考えられた。 そこで今年度は、肺内滞留粒子量が閾値付近になるように条件を設定し、短期間高濃度の吸入曝露試験を行った。その結果、肺内滞留粒子量は、ちょうど予測される閾値付近の1.5mgであったが、生物学的半減期は4.1ヶ月と排泄遅延は認められなかった。また、曝露群の肺重量は3日後に有意な増加が認められるのみで、病理組織像においても反応は小さかった。しかし過去のほぼ同じ肺内粒子量であった試料の吸入曝露実験では排泄が遅延しており、閾値の確認をするには、肺内滞留粒子量が閾値付近になるような吸入曝露試験を様々な条件で行い、データを蓄積する必要があると考えられた。 また、粒子の形状が排泄速度や肺組織、閾値に与える影響を不定形のチタン酸カリウム粒子を気管内注入することによって検討した結果、粒子状物質は、対照群に比較して肺重量の増加や肺組織の変化はほとんど認められず、肺内滞留性も低いことが認められた。しかし、約1割の粒子は肺に長く滞留することが認められ、これは貧食細胞に貧食されにくい大きなサイズの粒子によるものと考えられた。これらの結果から、粒子の形状やサイズ等の物理化学的因子が閾値に及ぼす影響も明らかにする必要があると考えられた。
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