2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13670512
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊藤 裕章 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (40252639)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 秀次 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (20237423)
|
Keywords | クローン病 / 潰瘍性大腸炎 / 炎症性腸疾患 / IL-6 / STAT3 |
Research Abstract |
クローン病や潰瘍性大腸炎では血清中のIL-6と可溶性IL-6レセプター(sIL-6R)が増加している。そこでIL-6のシグナルをブロックする抗IL-6R抗体の臨床応用をめざしてその有効性を実験腸炎モデルで検討した。クローン病モデルとして、SCIDマクスへのCD4^+CD45RB^<high>T細胞移入腸炎を用い、T細胞移入直後から毎週ラット抗マウスIL-6R抗体を腹腔内に投与し、コントロールとしてラットIgGを同様に投与した。コントロール群にみられた体重減少、下痢などの臨床症状および組織学的にみた腸炎は抗体投与により著明に抑制された。血管内皮細胞における接着分子ICAM-1、VCAM-1の発現は抗体投与により強く抑制され、腸管のCD4^+T細胞及びマクロファージの数も著しく減少した。抗体投与群ではIFN-γ、IL-1β、TNF-α mRNAの発現が著明に抑制されたが、IL-10やTGF-βなどの抗炎症性サイトカインは減少しなかった。粘膜バリアーを破壊する誘導型NO産生酵素の腸粘膜での発現も著明に減少した。TUNEL染色では抗体投与群でT細胞のアポトーシスが亢進しており、T細胞の減少は血管内皮細胞での接着分子の発現抑制によるだけでなく、STAT3依存性の抗アポトーシス遺伝子の抑制を介していることが示唆された。一方潰瘍性大腸炎モデルとしてDSS腸炎を用い、DSS自由飲水開始時に抗IL-6R抗体を1回腹腔内に投与した。DSS腸炎も抗体投与により著明に抑制されたが、驚いたことにSTAT3のリン酸化は減少しておらず、むしろ時間経過とともにリン酸化STAT3の局在は単核球から粘膜上皮に移行しており、修復機転との関係が示唆された。STAT3をリン酸化している因子のひとつとしてEGFの関与が示唆された。
|
Research Products
(12 results)
-
[Publications] Ito H, Hirotani T, Yamamoto M, Ogawa H, Kishimoto T: "Anti-IL-6 receptor monoclonal antibody inhibits leukocyte recruitment and promotes T cell apoptosis in murine model of Crohn's disease"Journal of Gastroenterology. 37(Suppl XIV). 56-61 (2002)
-
[Publications] Ito H: "Anti-interleukin-6 therapy for Crohn's disease"Current Pharmaceutical Design. 9(4). 295-305 (2003)
-
[Publications] Ito H: "IL-6 and Crohn's disease"Current Drug Targets. (in press).
-
[Publications] 伊藤裕章: "IL-6/IL-6Rと炎症"「ホルモンと臨床」特集/ホルモンと炎症-最近の知見-. 50(3). 265-272 (2002)
-
[Publications] 伊藤裕章: "炎症性腸疾患の新しい治療"「今月の治療」特集/炎症性腸疾患の新しい治療法-クローン病を中心に-. 10(4). 45-48 (2002)
-
[Publications] 伊藤裕章, 山本光成, 岸本忠三: "クローン病の病態におけるIL-6/IL-6レセプターシグナルの重要性"消化器と免疫. 38(2001). 97-99 (2002)
-
[Publications] 貴島芳彦, 山本光成, 榎本平之, 吉田賢哉, 黒田了文, 小川弘之, 伊藤裕章, 中村秀次: "単純性潰瘍5症例の検討"日本消化器内視鏡学会雑誌. 44(4). 780-787 (2002)
-
[Publications] 伊藤裕章: "粘膜内炎症性サイトカインを標的とした炎症性腸疾患治療"Molecular Medicine. 39(9). 1042-1047 (2002)
-
[Publications] 伊藤裕章: "炎症性腸疾患におけるIL-6の役割"臨床免疫. 38(5). 503-507 (2002)
-
[Publications] 伊藤裕章, 小川弘之, 廣谷友範: "IL-6シグナルを標的とした炎症性腸疾患の新しい治療"消化と吸収. 25(1). 38-39 (2003)
-
[Publications] 伊藤裕章(共著): "炎症性腸疾患のすべて"高添正和編集、メジカルビュー社. 4 (2002)
-
[Publications] Ito H: "The 3rd Symposium on "Helicobacter meets Inflammatory Bowel Disease""Springer-Verlag Tokyo (in press).