2003 Fiscal Year Annual Research Report
シナプトタグミン黒質ノックダウンによる一過性パーキンソン病ラットの研究
Project/Area Number |
13670665
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
佐治 真理 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (50114179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 和子 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (60050704)
秋田 久直 北里大学, 医療衛生学部, 助教授 (70118777)
鈴木 信之 北里大学, 医療衛生学部, 助教授 (10050650)
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Keywords | アンチセンス / シナプトタグミン I / 早期パーキンソン病 / HVJ-リポソームベクター / ドーパミン枯渇 / ノックダウン / 黒質 / 運動障害 |
Research Abstract |
結果:1、伝達物質放出制御蛋白質であるシナプトタグミンIに対するアンチセンスDNA(syt-AS)を設計合成した。このsyt-ASを非ウィルス遺伝子導入ベクター(HVJ-リポソーム)に封入したsyt-AS-HVJ-liposomeベクターを作成した。 2、このsyt-AS封入ベクターの脳局所でのシナプトタグミンI発現抑制(ノックダウン)効果とその作用持続時間を、ベクター海馬注入後経時的にウエスタンブロット解析により調べた。その結果、注入部位海馬でのシナプトタグミン量は、ベクターでのアンチセンス導入により、導入後4日-8日で最大50%の発現抑制を受けた。また、一回のアンチセンス導入による発現抑制は約10日間持続した(S.Kobayashi et al.,Neurosci.Res.,2002)。 3、2)により発現抑制効果を確認したsyt-AS封入ベクターをラットの片側(右)黒質に局所導入してシナプトタグミン黒質ノックダウン動物を作成した。アンチセンス注入後4日目のシナプトタグミン黒質ノックダウン動物について、アンフェタミン誘導多動における同側回転運動(パーキンソン様運動異常)頻度を評価した結果、ノックダウン処置動物においてわずかに運動異常がみとめられたが対照群との間に有意差はなかった。 4、運動異常解析後に、この黒質ノックダウン動物の両側線条体に微量透析(マイクロダイアリシス)プローブを設置し、手術からの回復を待って1-2日後に線条体ドーパミン放出量をマイクロダイアリシス装置により計測した。左(無処置側)線条体ドーパミン放出量を基準に右(処置側)線条体ドーパミン放出量の減少変化を解析した結果、ノックダウン処置により線条体ドーパミン放出量が対照処置群に対して著しく減少(20-70%)することが示された。 考察と結論:1、シナプトタグミン黒質ノックダウンは予測された通り線条体での神経終末からのドーパミン放出量減少を引き起こした。しかし、ドーパミン放出減少の程度と運動障害の程度との間に相関が認められず、この黒質ノックダウン処置による線条体ドーパミン枯渇(20-70%)は、顕著な運動障害(回転運動の発生)を引き起こすことのない軽度のものであった。 2、これらの知見から、本研究において作成されたシナプトタグミン黒質ノックダウンラットは、運動機能上の障害がまだ軽微で著明な運動症状が認められない早期パーキンソン病のモデル動物であると結論された。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Kobayashi S, Ohno K, Iwakuma M, Kaneda Y, Saji M: "Synaptotagmin I hypothalamic knockdown prevents amygdaloid seizure-induced damage of hippocampal neurons but not of entorhinal neuron"Neuroscience Research. 44. 455-465 (2002)
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[Publications] Iwakuma M, Anzai T, Kobayashi S, Ogata M, Kaneda Y, Ohno K, Saji M: "Antisense in vivo knockdown of synaptotagmin I and synapsin I by HVJ-liposome mediated gene transfer modulates ischemic injury of hippocampus in opposing ways"Neuroscience Research. 45. 285-296 (2003)
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[Publications] Kobayashi R, Sekino Y, Tanaka S, Shirao T, Ogura T, Inada K, Saji M: "Antisense knockdown of drebrin, a spine protein, causes stronger preference, impaired prepulse inhibition and increased sensitivity to psychostimulant"Neuroscience Research. in press.