2002 Fiscal Year Annual Research Report
II型シトルリン血症責任遺伝子産物citrinの局在ならびにその遺伝子異常と病態
Project/Area Number |
13670680
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
山田 達夫 福岡大学, 医学部, 教授 (60159217)
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Keywords | Citrin / 免疫組織 / 肝性脳症 / シトルリン血症 |
Research Abstract |
肝臓特異的argininosuccinate synthetase (ASS)蛋白の低下に基づく成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)ではASS遺伝子の異常は認められず、これまで原因不明であった。しかしながら最近鹿児島大学生化学佐伯教授らによってCTLN2の責任遺伝子としてSLC25A13が同定され、Ca-dependent mitochondrial solute carrierと考えられる遺伝子産物がcitrinと命名された。CTLN2は常染色体劣性の遺伝病で、合計6種類の変異が証明され、遺伝子診断がほぼ確立された。治療では生体肝移植が行われているが、これまでの遺伝子解析からはcitrinの変異遺伝子をヘテロ接合体として持つ保因者は50人に一人であり、ホモ接合体では一万人に一人と推定されている。この相違についての説明が十分検討されていない。その理由として、発病しないか他の疾患として診断されている(てんかんや精神分裂病など)可能性が指摘できる。あるいは他の原因不明の神経疾患の危険因子である可能性も残されている。本研究では中枢神経系でのcitrinの機能を明らかにするために、Western blottで抗体の特異性を確かめ、多くのヒト臓器(心臓、腎臓、肝臓、膵臓、骨格筋、肺、脳)を免疫組織学的に染色を行い、in situ hybridization histochemistryを実施し、citrin mRNAの発現を検討した。 その結果Western blottでは74kDaの一本のバンドが得られ、特異性のあることを確認した。臓器では肝と腎で多く発現し、膵と脳では中程度で、肺は軽度で、心臓と骨格筋では認められなかった。免疫組織学的検討では、肝細胞に強く染色され、腎臓の尿細管とpodocyte、膵臓のcentroacinar cell、肺の上皮細胞、脳ではアストロサイトが陽性であった。in situ hybridization histochemistryではほぼ免疫組織学的に陽性所見を得た同様の細胞でcitrin mRNAがみられた。これらの結果はヒトではcitrinは限られた臓器に分布して、発現局在していることを示し、肝細胞に強く発現局在し、脳ではアストロサイトに陽性所見が得られた点は成人発症II型シトルリン血症による脳症発症に機構を考える上で興味深い結果である。以上の結果をまとめ、論文を作成し、現在投稿中である。
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