2002 Fiscal Year Annual Research Report
心筋ミオシン軽鎖の構造変化によるモーター分子機能の改変と心不全治療への応用の検討
Project/Area Number |
13670689
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山下 尋史 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (50323572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐田 政隆 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (80345214)
杉浦 清了 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (10272551)
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Keywords | 心筋ミオシン / ミオシン軽鎖 / インビトロ再構成系 |
Research Abstract |
ミオシンは重鎖と軽鎖からなる6量体であり、ATPを加水分解しながらアクチンと相互作用して筋収縮という力学的仕事を産み出す。アクチン結合部位やATP水解部位はミオシン重鎖頭部に存在するが、ミオシン軽鎖は重鎖頭部の近傍に位置していることから、モーター分子機能に重要な役割を果たしている可能性が示唆されてきた。 本研究では、重鎖が共通で、軽鎖アイソフォームのみが異なる(心室型と心房型)2種類のミオシンをラット心筋より精製し、その分子機能をインビトロ再構成系(in vitro motility assay)を用いて検討した。本法は、精製したアクチンとミオシンを用いて、分子相互の滑り運動をATP存在下で再構成し、その分子モーター機能を定量するものである。これらのミオシンはATP水解活性には差がないが、モーター機能に明らかな差があった。即ち、心室型軽鎖をもつミオシン分子の方が心房型軽鎖をもつミオシン分子よりも平均発生張力が大きく、これはアクチンと結合して張力を発揮している時間が長いためであることが明らかとなった。このことは、同時に心室型軽鎖をもつミオシン分子の方が、ATP1分子当たりの発生張力が大きく、エネルギー効率が良いことを意味する。 この結果は、ATP水解の化学エネルギーを筋収縮という力学的仕事に変換する上で、ミオシン軽鎖が重要な役割を果たすことを示めす。従来の強心薬は細胞内Ca^<2+>濃度を変化させることにより収縮力を増強し、同時に心筋のエネルギー消費量も増加させるため、心不全症状を短期的に改善する一方で、長期予後を悪化させる原因になっていると思われる。ミオシン軽鎖のATP水解速度を変化させずに発生張力を変化させるユニークな調節機能に着目して、ミオシン軽鎖を標的とする薬物や遺伝子導入によりその構造・機能を改変すれば、エネルギー効率を悪化させない強心治療が可能になると思われる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 山下 尋史: "ミオシンモーターの力学特性"呼吸と循環. 50巻1号. 59-73 (2002)
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[Publications] Yasuda S, Sugiura S, Kobayakawa N, Fujita H, Yamashita H, Katoh K, Saeki Y, Kaneko H, Suda Y, Nagai R, Sugi H: "A novel method to study contraction characteristics of a single cardiac myocyte using carbon fibers coupled with a feedback system"Am J Physiol. 281. H144-H1446 (2001)
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[Publications] Saeki Y, Takigiku K, Iwamoto H, Yasuda S, Yamashita H, Sugiura S, Sugi H: "Protein Kinase A increases the rate of relaxation but not the rate of tension development in skinned rat cardiac muscle"Jpn J Physiol. 21. 427-433 (2001)