2001 Fiscal Year Annual Research Report
先天性心疾患モデルラット全胚培養による冠動脈奇形発生と心筋細胞成長障害の機序解明
Project/Area Number |
13670797
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
中川 雅生 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (40188909)
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Keywords | 全胚培養 / ラット / 心臓 / 冠血管 / 心外膜 / 実体顕微鏡 / ビスダイアミン |
Research Abstract |
(1)妊娠10.5日のWistar系母ラットを屠殺しNew(1973)の方法により全胚培養を開始した。培養胚を実体顕微鏡下で経時的に観察し心膜の発生時期を確認した。培養開始12時間(胎生11日に相当)から横中隔(transverse septum、横隔膜の原基)よりシート状の心膜が出現し心臓を覆い始めるのが観察された。培養開始36時間(胎生12日に相当)後に心臓はほぼ完全に心膜で覆われ、その後、心膜と心臓が時間とともに接近していった。この間に、心臓ではループ形成が行われ、動脈幹、心球部、心室、心房の各部位の分化が鮮明となり、動脈幹中隔、心室中隔と心房一次中隔の出現が観察された。心筋では肉柱の発達が目立ってくるが、心筋層の厚さに大きな変化はみられなかった。 (2)妊娠10.5日のWistar系母ラットにビスダイアミン200mgを胃ゾンデにて注入、投与終了3時間後に屠殺し、(1)と同様の方法で全胚培養を開始した。この胚では心膜の出現が遅く、さらに培養開始36時間後でも心臓は心膜で完全に覆われず、最終的に一部欠損しているのがみられた。その後の観察では、心膜で覆われた部位でも心膜と心筋の接近が確認できなかった。また、これらの心臓では心室や流出路の拡大を伴っていた。肉柱の発達や心筋層の厚さはコントロールと明らかな差を認めなかった。 (3)培養開始36時間の心臓において、血管内皮誘導因子(V-CAM)および細胞の形態変化を誘導する因子(テネイシンX、bFGF)の発現はビスダイアミン投与胚で心膜と心筋との空間に強く発現していた。これは、心膜と心筋の接近を促進し、冠血管形成を促すための代償的な反応と考えられた。 以上の結果から、ビスダイアミンは心膜の発生や心筋への接近を遅らせ、冠血管の形成を障害することが示唆された。次年度は、冠血管形成の遅れが冠循環や心筋の生長に与える影響について検討したい。
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Research Products
(1 results)