2002 Fiscal Year Annual Research Report
細胞周期調節蛋白p27ノックアウトマウスにおける大脳皮質発生異常に関する研究
Project/Area Number |
13670837
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高橋 孝雄 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (80171495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三橋 隆行 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (80338110)
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Keywords | 大脳皮質発生 / 細胞周期 / 分化誘導 / マウス / 神経前駆細胞 / CDK |
Research Abstract |
CDK抑制遺伝子p27^<Kip1>は、増殖抑制・分化誘導に重要な細胞周期調節蛋白であることが、培養細胞の研究で明らかとなっている。p27^<Kip1>ノックアウトマウス(p27KO)では各臓器が約30%増大し、大脳のサイズも増大する。以上より、p27^<Kip1>は大脳皮質を構成する神経細胞数を調節する役割を担っている可能性がある。本研究では、p27KOにおける神経前駆細胞(neural progenitor cell, NPC)の分裂増殖・分化誘導パターンを定量解析し、大脳皮質形成におけるp27^<Kip1>の役割を検討した。 方法 妊娠14日(E14)のマウスに、ブロモデオキシウリジン(BUdR)を3時間おきに腹腔内投与した。E14胎仔前脳において、BUdRが陽性であるNPCの割合(labeling index, LI)をBUdR曝露2時間、8時間、14時間後に計測した。得られたLIよりNPC細胞周期長を計算した。 結果 E14における2時間のBUdR曝露により、WTとp27KOの両者ともに脳室表面の細胞分裂像はほぼすべてBUdR陽性となった。すなわち、細胞周期のG2期とM期の合計は約2時間であった。8および14時間曝露後のLIにもWTとp27KOで有意差を認めなかった。以上より、E14におけるNPC細胞周期長は、WTとp27KOで差異を認めなかった。 考察 昨年度我々は、E14において分化を開始するQ細胞の数がp27KOにおいて減少することを明らかにした。E14以降にNPCより産生されるニューロン数の増加は、1.NPC分裂回数の増加(細胞周期の短縮)、2.Q値の変動(少なくともE14までは低値、その後急速に増加)のいずれか、または両者で説明可能である。今年度の研究結果より、E14においてp27KOのNPC細胞周期長に変化を認めなかったことより、p27KOの大脳皮質発生異常は、Q値の異常に基づく可能性が強く示唆された。これらの知見に基づき、今後さらに詳しい解析を行う予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 三橋隆行: "神経系前駆細胞の分裂動態と大脳皮質発生"医学のあゆみ. 201・5. 754-758 (2002)
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[Publications] 三橋隆行: "大脳皮質発生の数学モデル"Brain Medical. 14・4. 28-32 (2002)
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[Publications] Caviness, VS: "Morphogenesis of the human cerebral cortex. In : Disorders of neural migration"Ed.Barth, PG.Mac Keith Press, London. 1-23 (2003)
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[Publications] Takahashi, T: "Analysis of cell generation in the telencephalic neuroepithelium. In : Neural Stem Cells : Methods and Protocols"Eds.Zigova T, Sanberg PR and Sanchez-Ramos. The MIT Press, Cambridge. (2002)
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[Publications] Caviness, VS: "Neocortical neuronogenesis : the G1 restriction point as master integrative mechanism. In : The Newborn Brain-Scientific Basis and Clinical Applications"Eds.Lagercrantz H and Hanson M. Cambridge University Press, Cambridge. 46-66 (2002)
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[Publications] Nowakowski RS: "Population dynamics during cell proliferation and neuronogenesis in the developing murine neocortex. In : Cortical Development, From Specification to Differentiation"Ed.Hohmann C, Springer-Verlag, Berlin. 1-25 (2002)
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[Publications] Caviness, VS: "Neocortical neuronogenesis : regulation, control points and a strategy of structural variation. Neurscience Frontiers Tsukuba"Ed.Ezaki L, Universal Academy Press, Inc, Tokyo(in press).