Research Abstract |
本研究は、新生仔ブタの低酸素虚血(Hypoxia-Ischemia,以下HI)脳障害モデルを用い,軽度低体温と薬物の併用療法により,将来臨床応用可能な新生児仮死の脳保護法を開発することを目的としている.本年度は以下の知見を得た. 1.新生仔ブタHIモデルの作成 (1)日齢3未満の新生仔ブタを対象とした.酸素濃度15%,換気数15回/分,および両側総頸動脈閉塞を60分間継続(HI負荷)した後,両側総頸動脈閉塞を解除し,酸素濃度100%,換気数60回/分で10分間蘇生した.HI負荷中および蘇生後48時間において,脳波,脳酸素化状態(近赤外線分光法),局所脳血流(レーザードップラー法),血圧,心拍数,血液ガス,血糖,直腸温,および脳温(鼻咽頭温)をモニターし,至適範囲に維持した. (2)HI負荷中の脳波はほぼ平坦化し,蘇生後一時的に回復した後,徐々に振幅の低下と徐波化を認め,仮死蘇生後のいわゆる「遅発性(二次)脳エネルギー欠損」が脳波でも認められる可能性が示唆された.今後さらに周波数分析による振幅強度の変化について検討する予定である. (3)実験終了後脳を摘出し,病理組織学的に検討した.一部アポトーシスを示唆する所見を認めた.今後免疫染色等でアポトーシスの程度を評価する予定である. 2.選択的脳低温療法の実際と安全性の確認 頭部および体幹を別々に冷却(保温)パットで覆い,鼻咽頭温35.5℃,直腸温38.5℃を目標温とする選択的脳低温療法を採用した.蘇生直後より導入(1時間),維持(36時間),復温(3時間)とした.新生児脳障害の病態下では本法の安全性が確認されていないため,選択的脳低温療法における各パラメーターを観察したところ,脳血流量,脳酸素化,血圧,心拍数に変化は認められず,選択的脳低温療法では安全に管理できた.今後,このHIモデルと選択的脳低温療法を用い,薬物との併用療法の有効性を検討してゆく予定である.
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