2002 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト毛嚢特異的ペプチジルアルギニンデイミナーゼの構造と生理機能の解析
Project/Area Number |
13670904
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
川田 暁 近畿大学, 医学部, 助教授 (90160986)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高原 英成 茨城大学, 農学部, 教授 (30122063)
手塚 正 近畿大学, 医学部, 教授 (20013964)
荒金 兆典 近畿大学, 医学部, 講師 (40232045)
|
Keywords | ペプチジルアルギニンデイミナーゼ / ヒト毛細管 / 大腸菌発現 / Two-cistran / トリコヒアリン |
Research Abstract |
蛋白質のArg残基をCit残基に変換する酵素はペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PADと略記)と呼ばれ、細胞の終末分化に関与していることが示唆されている.同酵素には組織分布が異なる3つのアイソタイプ(Type I, II, III)が存在することが知られているが、我々は毛嚢細胞にこれらと異なるアイソタイプが存在することを見出し、これをPADT4とした。平成13年度の研究ではヒト毛嚢組織からホモログRT-PCR法および3'並びに5'-RACE法によりヒトPADT4cDNAの全塩基配列を決定すると共に予備実験として本cDNAをpGEX 4T-1発現ベクターに組換え、融合型酵素として大腸菌で発現させた結果、大腸菌抽出液にPAD活性が見出されたことから、本cDNAは間違いなくヒトPADT4をコードするものであることを明らかにした. 本年度の研究では、本cDNAを我々が確立したTwo-cistron pKK223-3発現ベクターに組換え、IPTGにより独立型の酵素して発現させた。本組換え型酵素は、上記の培養菌体抽出液を硫安塩析の後、Buthl-Toyopearl 650c疎水性クロマトグラフィー、ついでSP-Sepharose陽イオン交換クロマトグラフィーにより、SDS-PAGE上ほぼ単一バンドまで精製した。本法により、1リットルの培養菌体から約2mgの酵素蛋白質が得られ、その精製標品の比活性は610units/mg(基質Bz-L-Arg-O-Et)であった。ヒトPAD T4は、Bz-L-Arg-O-Etとほぼ同程度にBz-L-Argにも働き、その他Bz-L-Arg-O-Me、Bz-L-Arg-NH2に対しても高い反応性を示し、本酵素が他のアイソタイプに比べ幅広い基質特異性を有することが判った。また、本酵素の反応には高いカルシウム濃度(最大活性に達するに15mM以上が必要)を要求することも明らかとなった。外毛根鞘の骨格蛋白質の一つであるトリコヒアリンに対しては、高い反応性が認められ本酵素の組織内標的蛋白質としてトリコヒアリンが注目される。現在、ヒトPAD T4に対する特異抗体を作成しており、今後は組織内における本酵素とトリコヒアリンの共局在性を明らかにする予定である。
|