2003 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍の微小環境を制御するMAPキナーゼシグナル伝達経路を分子標的とする放射線増感
Project/Area Number |
13670916
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
秋元 哲夫 群馬大学, 医学部, 講師 (10261851)
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Keywords | 放射線感受性 / 分子標的 / 放射線治療 / 腫瘍 / 微小環境 |
Research Abstract |
血管新生や酸素分圧、間質の多寡に起因する腫瘍と細胞外マトリックスとの相互作用といった腫瘍を取り巻く微小環境が、抗癌剤や放射線などに対する腫瘍の反応性に影響していることが徐々に明らかなとなってきている。生体内では腫瘍細胞は培養細胞とは異なり低栄養・低酸素などの劣悪な環境でも生存可能であり、また腫瘍細胞と細胞外マトリックスや細胞同士の接着を介した相互作用により放射線や抗癌剤で引き起こされる細胞内シグナル伝達系の活性化が修飾され、その感受性に影響を与えている可能性がある。これらの点を解明するため、まず癌細胞株を用いて増殖刺激が放射線誘発p53依存性アポトーシスに影響するか検討した。野生型p53遺伝子でp53依存性に放射線誘発アポトーシスを呈する細胞を用いた。この細胞をneural growth factor(NGF)またepidermal growth factor(EGF)の増殖因子存在下で照射し放射線誘発アポトーシスを比較すると、放射線単独に比しDNA agarose gel electrophoresisでのラダー形成、caspase-3の活性化およびPARPの切断が抑制された。これは、増殖因子添加によるシグナル伝達経路の活性化が放射線によるp53依存性アポトーシスのシグナルに拮抗している可能性を示す結果である。低酸素もhypoxia inducible factor 1(HIF-1)の活性化を介して細胞増殖シグナル伝達を活性化し、放射線抵抗性の一因である。これまで低酸素マーカーを用いて腫瘍の中の低酸素分画の描出、画像化の研究を行い、低酸素マーカーであるβ-D-iodinated azomycin galactopyranosideを放射性同位元素で標識してマウスに投与すると、腫瘍内の低酸素分画を画像化できることを確認している。現在、低酸素分画の多寡による放射線感受性の変化や放射線による低酸素分画の変化について検討を行っているところである。また、ヒストンのアセチル化というepigeneticな変化が癌化や癌細胞の遺伝子発現の調節に重要であることが明らかとなっているが、このヒストンアセチル化の状態が放射線感受性にどのような変化を与えるかについて検討した。脱アセチル化を阻害しアセチル化を亢進するヒストン脱アセチル化阻害剤を放射線に併用すると相乗的な放射線増感作用が得られる。その機序にアポトーシス誘導が関与しているを明らかにしているが、p53遺伝子が変異型の癌細胞でもアポトーシス誘導による放射線増感作用が認められることを確認している。アポトーシス誘導はヒストン脱アセチル化阻害剤と放射線の併用で相乗的に増加するが、その機序としてヒストン脱アセチル化阻害剤によるcaspase3活性化に加えて、Hsp90のアセチル化亢進によりRaf-1とHsp90の結合が弱くなりRaf-1分解の誘導と下流のErkの活性化抑制が関与していることを明らかにしている。p53遺伝子の変異は癌細胞の半数以上に認められ放射線や抗癌剤による治療抵抗性の一因となっている。そのためヒストンアセチル化の制御による治療抵抗性の腫瘍の効果増強は、臨床的に将来有望な治療となりうると考えられる。今後さらに詳細に臨床応用を目指して研究を継続する予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Tetsuo Akimoto: "Heat shock protein 90 chaperone complex : A molecular target for enhancement of thermosensitivity and radiosensitivity"Jpn J Hyperthermia. 18(3). 131-141 (2002)
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[Publications] Jun-ichi Saito: "Correlation between in vivo tumor weight, oxygen pressure, 32P NMR spectroscopy, hypoxic microenvironment marking by be-ta-D-iodinated azomycin galactopyranoside and radiation sensitivity"Int J Radiat Oncol Biol Phys. 54(3). 903-909 (2002)
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[Publications] Nonaka T: "Changes in the localization of heat shock protein 72 correlated with development of thermotolerance in human esophageal cancer cell line."AntiCancer Res. 23(6C). 4677-4687 (2003)
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[Publications] Nonaka T: "Changes in the number of HSF1 positive granules in the nucleus reflects heat shock semiquantitatively"Cancer Letters. 202(1). 89-100 (2003)
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[Publications] Kitamoto Y: "Caffeine diminishes cytotoxic effects of paclitaxel on a human lung adenocarcinoma cell line."Cancer Letters. 191(1). 101-107 (2003)
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[Publications] Imai R: "Signal transduction pathway to low-dose radiation-induced apoptosis in peripheral PNET cells"AntiCancer Res. 22(5). 2741-2747 (2002)