2002 Fiscal Year Annual Research Report
精神分裂病の神経発達障害モデル動物における精神異常惹起物質による行動感作の研究
Project/Area Number |
13670981
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
堀 孝文 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (40241822)
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Keywords | 統合失調症 / 神経発達障害仮説 / 服側海馬 / コカイン / 行動感作 / 行動薬理学 / ラット |
Research Abstract |
近年、統合失調症(精神分裂病)の病因として神経発達障害の関与が想定され、そのモデルとして新生仔期に腹側海馬を傷害したラットを用いた研究が行われている。このラットは思春期後に初めて行動異常を呈するため、統合失調症の発症の機序を包含した動物モデルと考えられている。本研究の目的は、このラットにコカインを反復投与して統合失調症の再燃の薬理学的モデルである行動感作の程度を検討し、より統合失調症に近似した動物モデルの作成をめざすことにある。 Sprague-Dawley雄性の生後7日のラットを用いた。定位脳手術で両側の腹側海馬にイボテン酸を1.5μgづつシリンジポンプにて注入した(Lesion群)。対照として同量のPBS緩衝液を注入した(Sham群)。生後21日に離乳し、両群それぞれ別のケージで2〜3匹づつに分けて飼育した。 ラットの思春期前に相当する生後35日に、これらのラットを行動測定用のケージに移し、新規環境での行動量を30分間測定し、その後両群とも生理食塩水を腹腔内に投与し、注射によるストレスを負荷した時の行動量を30分間測定した。その結果、従来の報告のように新規環境、注射とも行動量に両群間に有意な差を認めなかった。 ラットの思春期後に相当する生後49日に両群にコカイン(20mg/kg)を7日間連続投与し、投与1、4、7日目の行動量と、投与終了後1週間の離脱期間をおいてコカインを再投与して行動量を測定した。その結果、全ての測定日においてLesion群はSham群に比して過活動の傾向を認めたが、統計学的に有意な差を認めなかった。この理由として、本研究のコカイン投与方法が、行動感作を惹起するために十分ではなかった可能性や、Lesion群ではコカイン投与以前にすでに過活動になっているためにこれ以上の行動感作による過活動にはなり難い可能性が考えられた。
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