2002 Fiscal Year Annual Research Report
気分障害と精神分裂病の病態における脳情報伝達・神経可塑性障害の関与
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13671023
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
小澤 寛樹 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (50260766)
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Keywords | 統合失調症 / 気分障害 / cAMP / CREB / 発達・剪定 / ヒト死後脳 / 神経幹細胞 |
Research Abstract |
統合失調症と気分障害は2大内因性精神疾患として独立した病態が推定されているが、最近統合失調症における抑うつ症状と陰性症状は区別しにくく、うつ病と統合失調症が症候学的に一部オーバーラップする事象が存在するとの報告がある。また新規統合失調症治療薬が5HT2A受容体に親和性が強く、抗うつ薬と共通の薬理学的作用をもつことも知られている。以上の症候学的・薬理学的にうつ病と統合失調症の共通・相違点についてはおそらく脳情報伝達系の変化による神降可塑性が深く関与していると考えられるが、ヒト死後脳を用いてその物質的基盤を明らかにする試みは少ない。そこで1)cAMP-CREB系とGsαの細胞膜内分布変化のヒト死後脳における解析・2)ヒト生後早期の神経系の発達・剪定に関連する遺伝子群の探索。3)神経幹細胞の病態における役割の検討を行った。ヒト前頭葉死後脳cAMP-CREB脳情報伝達系においてうつ病群では低下、統合失調症群では亢進との関連性が示唆された。またヒト前頭葉の発達剪定期において変化した遺伝子群ではcAMP関臨写因子(CBP)、栄養因子(Human Insulin-like growth factor protein 5)、アポトーシス関連蛋白(Caspase)が認められた。早期献体脳では神経細胞が培養できることを確認し、ヒト死後脳の結果から得られたcAMP脳情報伝達系や栄養因子が神経幹細胞分化に影響を与えることも示した。以上より両疾患の新規治療法としてcAMP-CREB脳情報伝達系に影響をもつ薬剤の開発や神経幹細胞の神経保護効果を利用した(経静脈的自己神経幹細胞移植)治療が今後期待される。また上記と関連した末梢組織における生物学的指標の開発が重要である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 小澤寛樹, 他: "統合失調症の死後脳研究"精神科. 1. 281-290 (2002)
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[Publications] Gerlach M.Ukai W.Ozawa H.: "Different modes of action of catecholamine-O-methyltransferase inhibitors entacapone and tolcapone on adenylyl cyclase activity in vitro"Journal of Neural Transmission. 109(5-6):. 789-795 (2002)
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[Publications] Harada K.Sasaki N.Ikeda H.Nakano N.Ozawa H.: "Risperidone-induced Pisa syndrome"Journal of Clinical Psychiatry. 63(2). 166 (2002)
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[Publications] 佐々木竜司, 佐々木信幸, 小澤寛樹: "Milnacipranの使用経験"臨床精神薬理. 5. 93-101 (2002)
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[Publications] 小澤寛樹 他: "新しい診断・治療法開発に向けた精神疾患の分子メカニズム解明に関する研究 気分障害と精神分裂病の脳情報伝達系に関する分子メカニズム"厚生省精神・神経疾患研究委託費による12年度研究報告集. 570 (2002)
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[Publications] 山本恵, 山田真吾, 小澤寛樹 他: "気分障害患者死後脳における転写制御因子に関する生化学的研究"精神薬療研究年報. 34. 237-341 (2002)